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第6話

高熱が出た時のように、足元がおぼつかない僕をコーイチが支えながらカラオケ店を出て、タクシーを拾う。 「う…」 タクシーに行き先を告げて後部座席に乗り込む。 さっきよりはマシになってきたけどまだまだ気分が悪い。 コーイチにもたれかかるように僕はグッタリしていた。 その様子をルームミラー越しに見ていたタクシー運転手が話しかけてくる。 「お客さん、彼大丈夫かな?かなり具合悪そうだけど」 「大丈夫っすよ。弱いのにちょっと飲みすぎたんだ。後は面倒見るんで」 「ならいいけど、気をつけてねえ」 年配の運転手は前を向いて、車を発車させる。 コーイチの手は、目的地に着くまで僕の股間を弄っていた。 数十分後、到着した先はマンションのエントランス。 タクシーから降りた頃には僕は足腰が立たない。 「お前、なんでずっと触ってたんだよッ!」 「さて何でだろうな」 マンションの一室に連れていかれ玄関に押し込まれた。 「お、おい、ここ何処だよ」 「俺んちさ。そんな状態じゃ帰れねえだろ」 ソファーにでも座って休んどけと上着を抜きながらコーイチは台所へ消える。 部屋の中は至って無機質だ。 黒の革張りのソファ以外は全てが真っ白。 生活用品などが綺麗に収納されているのか、生活の匂いが感じられない。 辺りを見渡しているうちに幻覚がなくなっていることに気づいた。 まだクラクラはするものの、落ち着いてきている様だ。 ただ体の疼きはまだ、相変わらずだ。 コーイチがタクシーの中で触っていた所為(せい)だ。 疼きが冷めることなく、部屋に上がってしまっているこの状態はヤバイんじゃないかと思っているとコーイチがコップに水を入れて持ってきてくれた。 「飲んで少し横になってろよ」 「あ、ああ」 思い掛けない優しい声に僕は少し驚く。 水を一気に飲み、僕は遠慮なくソファーに横になる。 「さっきはやり過ぎた」 煙草に火をつけながら、コーイチが呟く。 フンワリとタバコの香りが鼻をくすぐる。 カラオケ店でのコーイチは別人の様だ。 真っ白な部屋で、聞こえるのは いつの間にか降り出した雨の音だけ。 「…コーイチは何でクスリで遊んでんの」 ふと、話がしたくなって僕は口を開く。 煙草を咥えたまま、コーイチは答えた。 「別に理由なんてねえよ。煙草と同じさ」 雨音が強くなって来ていた。 外の木に当たる雨音が五月蝿い。 僕は欠伸をして、強い眠気に襲われる。 「眠いなら寝ていけよ、ホラ」 突然、コーイチは僕の身体を抱き上げてそのままベットへ移動させた。 「ごめん、何だかすごく眠たくて…」 寝室も真っ白で、清潔そうなシーツの上に僕は横たわる。 柔軟剤の香りに包まれてこのまま深く寝入りそうだ。 そこから僕はあっという間に寝落ちした。

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