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第8話

コーイチが何度目かの頂点を迎えて、ベッドに倒れこむ。 サイドテーブルにあるミネラルウォーターを勢いよく飲み干した。 「も、流石(さすが)に…、休憩…」 肩で息をしながら仰向けになった。 外の雨はまだザアザアと降っていて、二人の息と雨音がリンクする。 僕はボンヤリとコーイチを見た。 今日初めて出会ったばかりなのに、こんな事になるなんて。 切れ長の目の横の、泣き黒子(ほくろ)。 最中の顔を思い出し僕はゾクリとした。 「コーイチ…」 僕がイッたばっかりの彼のソレを触ると、手を払いのけながらコーイチは呆れたように笑う。 「どんだけ淫乱なんだよ。人嫌いのくせに」 「責任取れよ、お前が誘ったんだから」 面倒くせぇ奴だなと笑って僕にキスをする。 舌を絡めながら。 今何時で、何時間ヤッてたのか。 身体のあちこちが痛いし、ベトベトしている。 「気持ち悪ぃな」 二人で笑う。 非日常な空間で僕たちはベッドの上にいた。 「…あのさ、柏木。お前名前なんていうの?」 タバコを手にして咥えながら、コーイチが僕に聞いてきた。 「なんで聞くの」 「こーゆー間柄になったんだから教えてくれてもいいだろ」 タバコに火をつけると紫煙があたりに流れる。 「ミキだよ。瑞穂の瑞に、希望の希。女の子みたいな名前だから嫌なんだ」 フゥーと、煙を僕の方へ吐き出してコーイチは笑う。 「可愛らしい名前じゃん」 その言葉を聞いて、僕は耳まで真っ赤になってしまった。 それから。 僕とコーイチはよく行動を共にするようになった。 大学の講座を聴いている時も、隣がコーイチなら苛々することもなく。 たまに夕飯を食べに行ったり、少量だけど僕もアルコールを飲んだり。 セックスをしただけでこんなに仲良くなれるものか、と思ったけど どうやら僕たちは性格が似ているらしい。 適度に距離感を保ちつつ、時には連絡もしない。 相手が連絡してこないときは詮索もしない。 基本、お互い一匹狼だ。 勿論、あれから何回もセックスをしている。 その時にクスリを使いながらやったのは初めの数回で、気がつけば 殆ど使わなくなっていた。 僕がどうしても気分が悪くなるせいでもあるけれど、コーイチも 率先的に使おうとしなくなった。 そんなある日、ベッドでまったりしているときにコーイチが呟いた。 「…オレ、もうクスリいらねえ」 「何で?」 「お前とのセックス、クスリ使わなくても超気持ちいいし」 「…他の人でも気持ちいいかもしれないよ?」 僕がそう言うと、コーイチがキスをする。 「お前みたいな淫乱なやつ、居ねえよ」

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