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ヒート

 学校が終わり、家に入る。  そして玄関で、悠衣は崩れ落ちた。  体が熱い。  息が、上がる。 「始まったの、かな」  悠衣にとって未知の領域、発情期――通称、ヒート。  個人によって熱っぽいだけという人もいるが、本格的に寝込む人も多いという、個々によって症状に個人差があるそれが、悠衣にどんな影響を及ぼすのか。正直、悠衣は怖かった。  体に力が入らない、ここまで歩いてくるのもやっとだった悠衣を、アルファに襲われなかったのは奇跡と言ってもいいくらいだ。  いつもより具合が悪そうな悠衣を海も心配そうに見ていたが、『大丈夫』だと悠衣が言ったら、大人しく引き下がってくれた。  正直今は、誰かといるのが怖かった。  ベータとはいっても、アルファほどではないがフェロモンは効く。  海に限ってそれはないと思うが……それでも悠衣は、今は誰かと一緒にはいたくなかったのだ。 「このまま、寝てもいいかな」  無理して這いつくばって部屋に行くより、ここでこうして、柊の帰りを待って部屋まで運んでもらった方がいい。  それに今、悠衣はものすごく眠たかった。  抑制剤は鞄の中にあるが、それを出すのですら怠い。  だから悠衣は、そのまま玄関で意識を手放した。

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