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初めての
「覚えてますか? 僕たちが、初めてキスをした日の事を」
首筋に顔を埋め、キスを下に下げていき、服で見えないライン、鎖骨の下辺りを柊は吸った。
ピクリと反応する体を包み込み、柊はあの日の悠衣を脳裏に浮かべる。
悠衣は今もそうだが、幼いころは顕著に女の子に良く間違えられる容姿をしていた。
それに力もなくボウッとした性格のせいで、からかいの対象になる事が多かった。
そしてからかわれ泣いて帰ってきた悠衣に、柊はおまじないだと言っていつものようにその頬に口付けた。
それでいつもなら泣き止むはずだったのだが、その日は違っていた。
――大好きな人同士は、口と口をくっつけるって、ほんと?
泣き止むには泣き止んだが、どこで聞いたのか、無邪気に首を傾げる悠衣。
――大好き、しゅうにぃ。
その直後に可愛くも笑みを見せる悠衣に、堪らず柊は口付けたのだ。
それは家族の情、弟への親愛……のはずだった。そう、言い聞かせてきた。
その初めて普通の兄弟を超えた日以来悠衣の中でそれが『楽しいもの』だと位置づけられたのかせがまれるようになり、いつしかそれが二人の間で普通になって。
「覚えて、るよ」
遠い昔の記憶に悠衣は覚えていないだろうと思っていたのだが、予想外の返事に柊は目を見開いた。
そんな柊を見て、悠衣は淡く笑む。
「だって、嬉しかったから」
動きの止まった柊の頬を両手で包み、啄むようなキスを落とした。
「一番、『好き』って感情が伝わってきて、嬉しかったんだよ?」
「それが、どの感情から来たものであってもですか?」
「好きは好き、でしょ? 柊兄から貰える『好き』なら、何でも嬉しいよ」
極上の微笑みを浮かべる悠衣の顔を見ないように、柊はその肩に自身の額を押し付け、長い息を吐いた。
高ぶる感情を鎮めるため呼吸を数回繰り返し、落ち着いてきた所で漸く顔を上げる。
「あまり可愛い事を言わないでください。酷くしたくないのです、ただでさえ乱れた姿に感情を抑えているというのに……これ以上『好き』が溢れてしまうと、理性が効かなくなりますよ?」
「いいよ。柊兄になら、何されても良い。酷くされても良いよ?」
「言いますね」
「あっ!」
指を二つに増やし、バラバラにかき乱す。
そして少しすると三本に増やし、その頃にはもう、震えた指で悠衣は柊にしがみつき、息も絶え絶えになっていた。
「悠衣。後ろ、向いてください」
「……うん」
そろそろと柊の膝の上から降りた悠衣は、柊にお尻を向けた。
四つん這いになった彼を見て、柊はその背中に赤い花を咲かせる。
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