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体調不良

「おい悠衣……大丈夫か?」 「……何が?」 「顔色、相当悪いぞ」  選択だけれど同じものを受けていた緋佐が、授業終わりと同時に悠衣のおでこに触り熱を確かめる。  すると「熱ッ!」という声と共に、その手はすぐに引っ込められた。 「今日は休んだ方が良いんじゃないか? 授業、結構入ってる日だろ」 「大丈夫だよ。どうせこれは、精神的なものだから」  ここはアルファのいない、オメガとベータのみの大学。  大半の人が発情期を迎えている年齢、その為アルファとオメガが同じ大学に通う事は滅多になかった。  番を自ら探そうとしない限り、アルファの通う大学にオメガが通う事はないのだ。  だからオメガの為の措置、発情期の期間は要請を出せば単位に影響はない……が、授業に出れないことは同じである。  それにこれは風邪ではない。  そんなので一々休んではられないと、悠衣は出していた筆記用具を筆箱に仕舞う。 「お昼、食堂行くでしょ? 早く行かないと席、なくなっちゃうよ」 「……これ以上悪化したら、強制的に保健室連れて行くからな」 「……うん」  睨みつけられ逆らえず、悠衣は渋々頷いた。  この講義室は二階、食堂は一階の隣の棟にある。  出していた荷物を鞄の中に詰め込んで、並んで食堂までの道を歩く。  互いに無言のまま賑わっている中に入り、食券を購入した後いつもの端っこの席に座った。 「最近は……進捗は、なさそうだな」  悠衣は、ちょくちょくと現状の報告を緋佐と、それからメールで海にもしていた。  報告と言ってもほとんどが『何もなかった』で終わるようなもので。  それでも吐き出すことで、悠衣は何とか保てていた。 「あれから四日か……二人きりにも、なれないのか?」 「うん。僕は大学、柊兄は家にいるんだけど……ずっと、実川さんと一緒に居るから」  仲睦まじい雰囲気に率先して入っていけるはずもなく、柊と二人になったのはあの日の朝のみ。  今日も、それから昨日も、悠衣は母の声で起こされた。  きっと、避けられているのだろう。  二人きりにならないように、もう終わったのだと、見せつけるように。  なので悠衣は柊に何も言えず、問い詰める事も出来なかった。  ただ恋人としての二人を見て、神経がすり減らされるだけの生活。  柊の事を考えては夜も中々眠れず、悠衣の目の下には隈が目立っていた。 「次の講義はないんだろ? なら、少しくらい休んだらどうだ?」 「……でも、保健室には行きたくない」 「分かってるよ。裏庭と屋上、どっちが良い?」 「……裏庭」  屋上は日に直接あたることになる、だから日陰のある裏庭を悠衣は選択した。

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