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11.おにーさんサイド
俺の家族は、兄妹揃って性癖が歪んでいる自覚がある。1番歪んでるのはたぶん弟だけど、大差はない。
弟は相手に散々痛い思いをさせるくせに、入れられることを好む。というかタチをやる気はないって言い切ってる。ドMのタチとかそう居ねえからネットとかで漁ってることも知ってる。
まあ男だし、弟のことはあんまり心配はしてない。
問題なのは妹。
弟を見て同じように遊べる相手を探してるけど、兄としては心配すぎる。本人も何かあったら、とは思うらしく俺をこっそり同行させることも多い。
そうして2人が引っ掛けたうちの1人が誠。
もう1人、阿川というらしい奴は弟穂積が連れ去った。
残った誠は細身で、妹穂波のタイプではない。穂波も阿川のようなガッチリした体型でいじめがいのある奴を選ぶし、何より平均体型の穂波よりどう見ても細かった誠。隣に並びたくないと穂波は嫌そうに言った。
取り残された誠は強いて言えば俺の好みに近い。とは言え細身な奴は好きだけど、俺は俺で心底ドMのやつがいい。自分に従順、痛いことも喜んでやるようなバカがいい。誠はそういうタイプに見えないし、これ以上待つことはないと伝えて帰るつもりだった。
それなのに、その誠は今俺の家の俺のベッドでスヤスヤと気持ちよさそうに寝ている。無防備にもほどがある。本人は忘れてそうだけどノーパン。横向いてるからかろうじて前は見えてないけど、尻は丸見え。隠すように布団をかけてやった。
泣きつく誠のあまりの必死さに折れて、犬みたいに見えて、こういうのを飼って育てるのも悪くねえかもって思った。とりあえずお試し期間の1週間、初日から摘んでるけど嫌いな反応ではない。
別にお湯ん中で精液ぶちまけたってどうせ掃除するからいい。わざと出させなかっただけだけど、あの泣きそうな顔には唆られた。
寝るまで泣きっぱなしの泣き虫。
そんなやつに構っていたため少し散らかっていたリビングを片付けていると誠の鞄からいろんなものが落ちてくる。その中に名刺もあって、目を疑う。
Zコーポレーション 本社技術部 伊藤誠
まじで本名教えたのかよってのもそうだけど、Zコーポレーションなんてその筋じゃかなりの有名企業。そこの支社だったりその手の関連メーカーの偉いさんはだいたいそこの技術部出身。その道を行くならエリートで出世街道真っしぐらと言われているようなところ。
そんなところにこいつがいんの?
信じらんねえ。
ここがそんなにブラックなことも信じらんねえけど、こいつがエリート候補ってのも信じらんねえ。
将来有望なんて言ってたけど、まじで有望。このブラックに飲み込まれず、無事に生き抜けることが出来たら、だけど。最初からこんなに期待されて育てられてるやつはそう居ない。彼女も何かするでも無く、仕事に殺されそうになってるこいつを支えてやるだけでよかっただろうに。
なにも特別なことしなくても、話を聞いて飯を作るだけで泣いて喜ぶやつだからその辺のハードルは低いと見て間違いない。
見てしまった誠の名刺。この歳の、入社2ヶ月で名刺を持つってことはすでに取引先にも出向く機会があるってこと。わずか2ヶ月の新人を連れていくのも、こいつの紹介というのが大きな理由だろう。ほんと、でっかいもん背負ってんなあ。
せめてここでくらい、気を張らずだらけたペット生活を満喫させてやろうと思い眠りについた。
翌朝、いつもとあまり変わらない時間に起きるのは毎日の習慣。あまり寝る時間がないらしい誠は今もぐっすり眠っていて、起こすのも躊躇われてそのまま寝かせておいた。
朝ごはんを作っていると何故か裸で慌ただしく騒ぐ誠が入ってきた。
「おにーさん!なんで起こしてくれないの!遅刻!遅刻!やばい俺の服!どこ!?」
「………今日は日曜だぞ」
「え!?ほんとに!?」
「昨日土曜だろ」
「…………ほんとに???ほんとに日曜???」
「ほんとに日曜日」
「うわぁぁあ!2ヶ月ぶりの連休だぁぁあ!!!」
起きてきて早々、社畜っぷりを発揮する。連休が2ヶ月ぶりって労基的に大丈夫か?
「おにーさん!朝ごはんは?」
「飯は用意するから、とりあえずシャツ着れば?」
「………おにーさんのエッチ!」
仕事に行かなければと着替えるつもり満々で脱いだのだろう。俺はなにもしてないし、今はなにもする気がないのにエッチとは。人んちで真っ裸で走り回って騒ぎまくるこいつにため息が出た。
「あ!おにーさん、俺コーヒー飲めないからあったかくて甘いカフェオレがいい」
しれっと注文してからシャツを取りに行った誠。朝起きてから数分でこうもうるさいやつってそう居ない。
戻ってきても朝ごはんに感激してまた泣いて、こうも騒々しい朝は久しぶりだった。
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