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こんがり焼けたトースト、スクランブルエッグ、コールスローサラダに玉ねぎのスープ。そして、リクエストしたカフェオレ。 ただ椅子に座ってるだけなのにどんどん出てくるそれに堪え切れない涙がボロボロと溢れた。 「ゔぅ、おにーざぁあん」 「何回も聞くけどさ、泣いてて味すんの?」 「ゔぅ、わがんないぃ。でもおいじぃ」 全然味なんて分かんないけど、美味しい。 おにーさんは苦笑して泣き止めって言うけど、むり。 久しぶりの連休。朝起きてご飯がある生活。 「ゔぅ、ゔ、、」 「泣くか食うかどっちかにしろ」 「だっでぇえ、おれぇ、ゔぅ」 人らしい生活。朝なんて起きたらご飯食べる間も無く家を飛び出てるのがこの2ヶ月当たり前で、朝ごはんなんて長らく食べてない。休みの日ですら今日のように仕事!と飛び起きることもよくあった。 「ゔぅ、おにーざん、ありがどお」 「とりあえず泣き止め」 「ゔん」 ズビズビとカフェオレを啜る。暖かくて甘くてほんのりコーヒーの香りがして美味しい。そう言えば、カフェオレも大好きだったなあ。 「ゔゔぅ、おにーざぁあん」 「なんで泣くんだよ」 カフェオレを持つ手が震えて飲むのを諦める。 それから泣き止むまでにしばらくかかったけど、おにーさんはご飯を急かすこともなくただ待ってくれていてた。 なんとか朝ごはんを食べ終わり、おにーさんに着替えろと言われた。 「どこか行くの?」 「お前んち。パンツパンツ言ってただろ」 「あ、洗濯してくれてありがとお。おにーさんに俺んち見られるの恥ずかしいなぁ」 茶化したように言ってみたけどまじで恥ずかしい。ここを家だとするならあれはなんだ。人が住む場所じゃない。あ、そっか。社畜が住む場所だからあれでいいのか。 おにーさんと外に出て、家の外に止めてた車に近づく。おにーさんが何か触るとピッて音がして、当然鍵が開いた。 いいなあ、車。別に好きとかはないけどあると便利。 「免許持ってんの?」 「持ってるよ。俺が製品運ぶこともあるからちゃんと運転出来るよ」 「お前営業もすんの?」 「ううん、全然しない」 俺は技術部。強いて言うなら研究開発職。もちろんそれがメインではあるけど、他にもすることが多すぎて全員が全員研究開発だけをしていたりはできない。 車に乗って俺の家に案内する。一駅分しか離れてないから10分も走れば家に着いて、おにーさんはごく普通のアパートじゃんって言った。中に入ったらびっくりするからな! 「ぶっ、くっ、くっ、あーだめだなんだこの部屋っ!くっ、あっはは、ダメだまじウケる」 「これが俺の部屋!!!」 「今時マジかよ……それ、見れんの?」 「見れるけどせっかく持ってきたのに端子違ってプレステ使えない」 「使えてもお前やる暇ねえだろ」 「そこは言わない約束だから!!!」 笑うよなあ。俺は笑うと言うより目を剥いたけど。幼い頃の写真の端に写っていたブラウン管テレビ。俺んちは完全デジタルになる前に液晶に切り替えたからあんまり覚えてないけど、一昔前のテレビ。 デカくて重くて映りは悪い。そしてプレステの端子をさす場所がない。 4.5畳のミニマムな部屋に押し込まれたベッドとブラウン管。これのせいで部屋の狭さはより一層ひどい。 「俺ならこんな家住めねえ」 「おにーさんちを知ったらここに戻りたくない」 「まあ好きにしろ。帰るって言うなら荷物はまた運んてやるよ。要るもんまとめろ」 うーん、帰る気になるかなあ。 ちょっと体を好きにされるけど、それでもあの広いベッドにふかふかの布団、あったかいご飯に人肌、話しても独り言にならず返事がある幸せ。 手放せる気がしないなあ。 っと、それは置いといて必要なものね。 プレステ パンツ あと何要る?会社行くときの服、は数枚あればいいか。 「………少なくね?」 「パンツとプレステと服持ったよ?あ、おにーさんゲームする人?」 「あんましねえけど、出来なくはない」 「やったあ!一緒に遊ぼうね」 呆れた目を向けてくるのに、その手は優しく俺を撫でる。人がいるっていいなあ。シリってゲームはしてくれないから。 「ここなら必要になればまた来たらいいか」 「うん、仕事帰りにも寄れるし。おにーさんちって原付止めれる?」 「ああ。駐車許可のステッカーやるからどっかに貼れよ」 「はぁい」 それから、荷物を乗せた車を運転しておにーさんは家に帰る。俺は原付でおにーさんちに向かう。 原付の俺の方がおにーさんちに早く着いて、玄関でおにーさんを待つ。車が入ってきて、綺麗に駐車したおにーさんが降りてくるとケーキ屋さんの箱を持っていた。 「わぁぁあ!おやつだぁあ!今日のおやつ???」 「食いつき早えよ」 「やったぁぁあ!」 おにーさんが持つ俺の荷物じゃなくて、ケーキをの箱を慎重に奪う。うっかり横倒しになったりしたら嫌だもん、せっかくのケーキ。これは俺が安全に運ぶ。そして美味しく食べる。

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