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16.おにーさんサイド

「おれ、いい子でいるから飼っててねえ」 そう言って落ちるように寝た誠。 22歳にしては幼い顔立ち。話し方も子どもっぽいところが残っていて、寝顔はさらに幼い。 そんな誠が乱れる姿は、唆る。 今は気持ちいいことだけをしてやればいいのに、つい加虐心まで唆られる。それでも気持ち良さを一緒に与えていれば面白いくらい反応を見せて、育て甲斐がありそうだなあとほくそ笑んだ。 いい子じゃなくても、これは飼い殺したい。 悪いことをしたらしっかり躾けて、よく出来たら甘やかす。そうして満たされるのが、俺の加虐心。 スヤスヤ眠った誠を抱えて寝室に移動し、俺もそのまま横になった。2人で寝るようになって狭くなったはずなのに、昨日も今日も寝苦しさは感じなかった。 翌日から、起きて慌ただしく朝飯を掻き込んで家を出て行き、夜な夜な疲れ切って帰ってくる誠。 今は俺に飼われているから帰ってきたら飯もあって洗濯もしてるけど、こんな状態でよく2ヶ月も生活してたもんだと感心するほどに疲れているのが目に見えて分かった。 入社2ヶ月やこそらで、相当な期待をかけられ過ぎているらしい。 木曜、珍しく早く(と言っても9時過ぎ)に帰ってきた誠は俺を見るなり泣いた。 「おにぃざぁぁん」 「はあ!?」 「うわぁあん、おにーざんだずげでぇ」 「何からだよ」 「ゔっ、ひっく、」 「とりあえず落ち着け、聞いてやるから、な?」 ずびずびと鼻をすする誠の涙を乱暴に拭い、少し落ち着いた誠が話し始める。 自分の誕生日に出張が被り、それも研究のデータを取るために大学の研究機関に行くらしくそれが不運にも自分の出身校。何が悲しくて自分の誕生日に出張して、何が悲しくてそんな日に忙しさゆえに振られた彼女に会わなきゃいけないんだと泣いていた。 誕生日の出張は俺でもかなり嫌。俺の場合、誕生日に働く可能性はまずないと言っても過言ではないけど、嬉しくないことくらいは分かる。 「そんな会いたくねえもん?」 「ずびっ、だっでぇ」 こいつの忙しいは嘘じゃない。誰が見たって働きすぎで、過剰労働もいいところだ。忙しくて連絡も取れず、会いにも帰れない。それを言い訳だと言われて、勝手に浮気を疑われて振られたって、聞いてるだけの俺的にはずいぶん身勝手な彼女だなと思う。 俺ならそんな元カノに会いたくないし、わざわざ誕生日に濡れ衣被りに行きたい奴はいないだろう。 「お前、浮気性なの?」 「うわぁあん!おにーさんまで酷い!」 「見えてねえよ。なんでそんな風に彼女が思ったのか謎」 「俺が知りたいよお!そりゃ確かに会うどころか連絡もほとんど出来なかったけど、仕事に殺されてただけだもん」 「そうだな。毎日朝から晩まで頑張ってんのは知ってる」 「ゔぅ、おにーざんだいずぎっ」 そう言って抱き着いてきた誠。こいつの好きは軽過ぎるけど、こうして甘えてくるのは嫌いじゃない。愚痴を言うのだって、泣きながら抱き着いてくるのだって他所でやるならちゃんと躾なきゃなんねえ。 「出張はその日に帰ってくんの?」 「ゔん、直帰していいって」 「ならケーキ買っててやるから頑張ってこい」 「ずびっ、ホールケーキ、ね。いちごいっぱいの。ちゃんと誠くん誕生日おめでとうって書いてるやつ」 「ふっは、子ども用かよ」 「いーの!俺はそれが食べたいの!」 「はいはい、分かったから」 ちゃっかりリクエストまでして、ようやく気が済んだのか涙が引き始めた。 その後、出張先でお土産を買ってくるから何がいいかなんて聞かれたけど、名物なんて全く知らないからおすすめでいいと答えた。

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