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26.
朝ごはんを食べて、片付けをしてくれるおにーさんを見ながら俺はいそいそとゲームを取り出す。この家でペット生活をしてても、平日にゲームをする時間は持てそうにないので週末のこの時間が楽しみだった。
「うあぁ、勝てない死ぬぅう」
「死にすぎ」
「わっ!居たの?」
「ちょっと前から見てた」
おにーさんもする?と聞くとしないと一蹴され、何度も死にながら少しずつコツを掴んでいき進める。これがこのゲームの面白さ。少しずつ進んでいける楽しみがいい。
気づけば熱中していて、いつの間にか人が増えていたことにも気づかなかった。
「やったあ!やっと勝てたぁあ!疲れた!おにーさんおやつ………?あれ?えーと、どっかで見たような」
やっと勝てた喜びにおやつを強請り振り向くと、見たことあるような無いようなそんな顔が1つ。その奥、キッチンにおにーさんが見える。
「もうすぐ飯するけどおやつ?」
「おやつなあに?」
「出掛けてないからマフィン」
「ご飯もうちょっと?」
「ああ」
「んー、ご飯まで我慢する」
「ねえ、俺の存在無視して話しないで」
「………なんか、見覚えあるような?」
「誠、それ弟」
首をひねる俺におにーさんが答えをくれる。おにーさんの弟。
「ミホちゃん!」
「穂積(ほづみ)だから」
「ミホちゃん、阿川くんが会いたいって言ってたよぉ」
「だから穂積だって。あいつはほんっとうっざい。体は好きだけど付き合う気は無い」
「体だけのお付き合いとかダメだよ」
「そう言うアンタは兄貴の何?」
「ペット」
「ぶぶっ!アンタも体だけじゃん!」
こうして噴き出して笑う顔、おにーさんによく似てる。澄まし顔の男らしい顔したおにーさんと、柔和でそれほど男らしい顔では無いミホちゃん。だけど噴き出して笑う顔はそっくりできょうだいなんだなあってよく分かる。
「だからこんなカッコしてんの?」
「カッコ?」
「シャツに生足。ほっそ、何食ってんの?っていうか兄貴ペットなら首輪しないと」
ああうん、間違いなくきょうだいだ。発想が同じ。
首輪は買ってもらったし、別に家の中では抵抗感も無いんだけど、仕事行くたびに、お風呂の時に、付け外しが面倒であんまりしない。もっとワンタッチのガチャってできるやつがいいなあ。
「まあいっか、ねえ。ほんとに髪切っていいの?」
「うん」
なるほど、俺の散髪要員として呼ばれたわけだ。ミホちゃんは美容師見習いってことだから、休みは不定期だろうし、俺は俺でひどい社畜っぷりだから今日休みらしいミホちゃんが来てくれたのか。
「髪型のリクエストある?」
「坊主はやだ。あと、たまに取引先の人に会うこともあるから奇抜なのもだめ」
「オッケー、人って初めてだから楽しみ。兄貴も穂波も父さんも母さんも切らしてくんないの。酷くない?」
「ミホちゃん散髪下手なの?」
「これでもカツラはほぼ毎日切ってるから!給料の大半がカツラに注がれてるから」
「ミホちゃんも社畜なんだねえ」
社畜仲間だぁとミホちゃんをのんびり眺める。ミホちゃんの柔和な顔つきはあんまり似てるように思わないなあなんて考えていて、この人がおにーさんの弟だってすっかり忘れてた。
ミホちゃんはおにーさんによく似たニンマリ笑顔で俺に詰め寄り、シャツの上から思いっきり乳首を抓った。
「いったぁッ!痛いっ!ミホちゃん!?」
「あ、思いの外いい反応」
「いたぁッ!いやっ、痛いっ!痛ぁいっ!」
グリグリ抓って、たまに引っ張って、痛くて涙が出てくる。痛くて逃げたい俺に馬乗りになって、両方の乳首を引っ張られる。ジタバタしてもあんまり意味がなくて、痛くて叫ぶ。
「穂積、やめろ。それは俺の」
「それならこんなカッコで家に置くなよ」
「おにーさぁん!痛いっ!酷いよこんなの!」
ミホちゃんの手が離れたらすぐさまおにーさんのいるキッチンに逃げ込んだ。おにーさんは俺にしがみつかれてやりづらそうにしつつもなにも言うことなくご飯の用意を進めてくれた。
ミホちゃんもいるから3人分。綺麗に巻かれたパスタが並んでいる。
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