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3人でパスタを食べながらのんびりと世間話を出来たら幸せだったなあ。1人で過ごしてた社畜時代よりは全然いいんだけど、してる会話がひどい。
「兄貴、これ貸して」
「嫌。自分で探せ」
「いいじゃん。1日どころか1回でいいし」
「無理。せっかく拾ったのに」
「兄貴が育てるなんてどんな気まぐれ?」
気のせい?気のせいだよね?俺の貸し借りの話ししてない?気のせい?
「反抗的なやつを抑えつけんのも良いけど、こうして泣きながら嫌がるやつも1回くらいは楽しいかも」
「それで満足できんの?」
「多分無理だから、1回だけのつまみ食い」
「誠がいいって言えばな。あと、俺が最後までしてから。俺はお前とは違うんだよ」
「ああ、兄貴は自分の好みを求めるもんね。従順なバカ」
「そ。そのためにこいつ拾って育ててんの。育てきるまで邪魔すんな」
見た目はともかく、中身は似た者きょうだいかあ。
俺には理解しがたい趣味嗜好を普通に話してるきょうだい。そんなにオープンにするもの?俺もきょうだいはいるけど、兄達がどんな趣味嗜好かなんて全然知らない。全員が全員身の丈に合わない高嶺の花に恋しがちと言うことくらいしか知らない。
このきょうだい、おにーさんもミホちゃんもさでぃすてぃっくらしいけど、どうやら細部が違うらしい。俺的には微々たる違いだけど、本人達は真剣そうだから何も言うまい。
「誠、おやつは?」
「んー、まだいい。ミホちゃん髪の毛切ってー」
「はいはい。大人しく座れる?」
あ、このはいはいって言い方。これもおにーさんの言い方によく似てる。このきょうだいは顔よりも、変わる表情や口癖の方がよく似ている。
ハサミを持ってミホちゃんが少し緊張したように切るねと言って散髪してくれる。
さっき俺の乳首を抓ったとは思えないくらい優しく髪に触れて、丁寧に切ってくれる。おにーさんがさでぃすてぃっくなのはしっくりくるけど、ミホちゃんはなんかギャップがすごい。なんか雄々しさみたいなのを感じないからかなあ。でも阿川くんに入れたんだよね………?
「ええ!?」
「ちょっと!動くと変なところ切るよ!?」
「ミホちゃん、阿川くんに入れたの?」
「ぶぶっ、なんでそうなんの」
噴き出す声が2つ聞こえて、1つはミホちゃん。1つはおにーさん。おにーさんはその後もたまらんとばかりにケラケラ笑ってる。何がおかしいの???
「誠くんあのね、俺は相手をいたぶっていたぶって興奮するけど、突っ込む趣味はないの」
「???いたぶるだけなの?」
「いたぶっていたぶって、可哀想なくらいはち切れそうなものを入れるの。いきたくて必死な顔もたまんない」
恍惚とした顔ですごいこと言ってる。なんかたぶん、ミホちゃんって入れさせた後も好きになんて全然させてなさそう。おにーさんの方がマシ、かなあ。いい勝負か。そもそもちょっと変わった趣味嗜好なんだから今更どうおかしかろうと何も言うべきじゃない、ないない。
「阿川くんのことはいたぶっていたぶって、エッチしたの?」
「そうだねえ。楽しかったあ」
まだうっとりしてるミホちゃん。一体阿川くんが何をされたのか分からないけど、俺はやだなあ。
「痛いだけって、やだなあ」
「?兄貴に飼われてんだから痛いのも気持ちいいんでしょ?」
「誠はちげえよ。痛いだけならマジで泣いてる」
「そうなの!?なんでそんなん飼ってんの」
「だから言っただろ、躾けてるって」
驚くミホちゃんの手が俺に伸びたけど、それはおにーさんが止めてくれた。躾け中に手を出すのはマナー違反だろなんて言われて納得したミホちゃんを見て、この人たちは俺のことをなんだと思ってるんだと心の中で憤慨した。
そんな話をしながら散髪していたのに、切り終わったらさっぱりと綺麗に仕上がっていた。美容師さんって、話しながら切ってるもんね。ミホちゃんもさすが。人は初めてって言ってたけど上手だ。すごく練習してるんだろうなあ。
「ミホちゃんって仕事好きなんだね」
「?当然でしょ。誠くんは嫌い?」
「仕事は好きだけど、休みが欲しい……」
「?」
「そいつ、美容師のお前も真っ青なブラック企業で社畜やってんの。朝なんか7時に出るのが当たり前で、夜は早く帰ってきた日で9時。平均10時半とか」
「え、何それ。大丈夫?」
「大丈夫なわけないじゃんかぁあ!ミホちゃん!それで初任給4万だった俺の気持ち分かる!?いくら引かれるからって、引きすぎだから!次だって18万……今月だって明細見たけど18万………」
「やっす。俺も似たような給料だったけど、朝は9時半とかで夜も9時には帰れてたよ」
うぅ、拘束時間が全然違う。でもお給料の半分くらいがカツラ代って考えるとミホちゃんの方が大変なのかな。俺、お給料削って仕事のためにしてることってないし。
俺とミホちゃんは社畜話に花を咲かせて、少し打ち解けたように思う。ミホちゃんは職業柄とても話しやすいし、柔和な雰囲気についつい話し込んでしまった。
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