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29.
おにーさんちの最寄駅につき、のんびり歩いて家に向かう。途中コンビニに入って時間を潰しながら、おにーさんが帰ってくるのを待つ。
予想よりも早く終わった俺は締め出し状態だった。
「誠、悪ぃ遅くなった」
「いいよ………おにーさんっ!それケーキ!?」
「うわっ!飛びつくな!崩れるぞ!」
「ケーキ!?俺の??」
「お前が言ったんだろ!ホールでイチゴ乗ってるやつ買ってきたから」
俺を迎えにコンビニまで来てくれたおにーさんは、スーツ姿にバックを持って、もう片手にケーキ屋さんの袋を持っていた。そう言えばケーキをねだった覚えがあるけど、あの時は誕生日に出張が嫌すぎてよく覚えていない。けどイチゴの乗ったホールケーキは好き。飛びつきたい気持ちを抑えて、早く帰ろぉとおにーさんを急かす。
「誠、うちの鍵やっぱ持っとくか?」
「こんなこと滅多にないよ?」
「でも持っとけ。家にいるほうが良いだろ」
「俺、先に帰ってもゴロゴロしてるだけだよ?」
「それがお前の仕事だろうが」
そう言って髪をぐしゃりと撫でられた。
家に帰るとその言葉通り、おにーさんは手伝わせたりせずにのんびりしてろと言ってくれた。
ゴロゴロできるって幸せだなあとソファに転がっておにーさんを眺める。
「ねーおにーさぁん」
「なんだ?晩飯はもうちょい待てよ、まだ焼いてる」
「そおじゃなくて。今日俺の誕生日だよね?」
「そうだな」
「俺ね、したいことあるんだあ」
「なんだ」
「おにーさん、今日はエッチなことしてくれる?」
ぶっと噴き出す声と、その後すぐにアッチ!と叫ぶ声が聞こえて、姿勢を直しておにーさんを見る。おにーさんはポカンと俺を見ていて、呆れたようにため息をついた。
おにーさん、平日は俺が遅いから何もしてこないし、前の土日は俺が出張のための資料作りとかをしてたから何もしてこなかった。
もちろん2週間も抜かないなんて、夢精間違いなしだから自分でしようとしたけど、うまく出来なかった。AV見るよりおにーさんにされたことの方が興奮するけど、どうしておにーさんがそこにいるのに1人でしてんだろって思ったらなんか、勃つだけ勃ってどうしようもなくて本当に大変だった。
それからは夢精に怯えながら眠った(といってもおにーさんの暖かさですぐに寝れた)。幸いにも夢精することはなかったけど、放っておくとやばいもん。
「何、溜まってんの?」
「だって、おにーさんにされるのが気持ちよすぎておかしくなるんだもん」
「ははっ、痛くねえの?」
「痛いよ。けど気持ちくておかしくなっちゃう。それを知ったら、普通のオナニーじゃ満足できなかった」
しようとはしたんだ?と意地悪に笑ったおにーさんにコクリと頷き、おにーさんを見る。ニンマリ笑って、風呂の後なと言って調理を再開した。
その日の夜ご飯はやっぱり俺の好きなものだった。
ハンバーグにエビフライ、温野菜のサラダとスープ。それだけでもわーいと思ってたのに、皿に乗らなかったと後から唐揚げも出てきて嬉しさで踊り出しそうだった。
「おにーさんありがとお!すっごい美味しい!」
「食べてねえだろ」
「美味しいことはもう知ってるもん。早く食べよっ」
「はいはい」
2人でいただきますと言って食べ始める。
最近泣くことは減ったはずなのに、今日はダメらしい。また涙が出てきて、せっかくのご飯の味がよく分からなくなったけど、俺は全部食べきった。
ごちそうさまをしてようやく涙が収まってきたのに、おにーさんがケーキを出してくれてまた涙が出てきた。
「チョコに名前、名前描いてるっ」
「お前がそうしろって言ったんだぞ」
「ゔぅ、よく覚えてないけど、ありがとぉ」
お礼を言いながら、そんなこと言ったっけ?と思い返してみるけどやっぱり思い出せない。
思い出せないけど嬉しい。去年家族でケーキを食べた時だって好きなカットケーキ選んでいいよって言われただけでホールじゃなかった。ましてや誕生日当日でもなかった。ホールケーキなんて最後に食べたのはいつだろう?こんな風に名前入りのケーキなんてもっと前のはず。
自分でねだったらしいことだけど、それを叶えてくれたおにーさん。俺、やっぱりおにーさんに飼われて良かった。
「おにーさん、大好き」
「はいはい」
そうしておにーさんに飛びついてもおにーさんは俺を支えて頭を撫でてくれて甘やかしてくれる。大好きを繰り返してグリグリと頭を押し付けると早く食えと言われて、ようやくおにーさんから離れてケーキを食べた。
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