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あの後、おにーさんのものをお口でご奉仕する練習をさせられた(お尻にバイブ入ったままさせるとか鬼だ!と思ったけど言わなかった)。フェラに対する抵抗感は意外となかったけど、やっぱりおにーさんのもののサイズが問題。大き過ぎていつか俺、顎外れるんじゃないかなあ。整形外科も探しておいてもらおうなんて真剣に考えたほどだった。 「おにーさん、おもちゃはもうやだ」 「しばらくは我慢しろ」 「えええ、やだあ」 しばらく我慢しろって、しばらくっていつまで?やだやだと転がる俺の頭を撫でる。 「ああいうおもちゃって俺好きじゃねえからしばらくしたら使わねえよ。その代わり尿道用のん買ってみるか」 「やめてぇえ!俺のおちんちん壊さないで、髪の毛より細いなんてありえないでしょ?むりむりむり!」 「そもそもなんで髪の毛入れようと思ったんだよ」 「………なんか、入るかなあと思って」 「だろ?入るって、たぶん」 「無理だよおッ!」 うわぁんと泣き真似をして泣きつく相手がおにーさんって辺りがどうしようもない。きっとこの人は俺がどんなに止めたって尿道用のおもちゃを買ってくる。そして何が何でも俺に入れる。泌尿器科、ちゃんと探してねとおにーさんに泣き声で訴えるとクスッと笑い声が聞こえてもう一度頭を撫でられた。 そんな風に優しくされると何にもいう気になれなくて、抱きつくように不貞寝してるうちにそのまま寝てしまった。 のんびり起きた日曜の朝、おにーさんが作ってくれた朝ごはんを食べる。朝ごはんを食べる俺におにーさんがカフェオレを持って来てくれて、そのまま前の椅子に座った。 そして、俺にお盆の予定を尋ねた。俺にお盆休みなんてない。会社としては休みだけど、研究、開発をしてる技術部ではそう何日も会社を空けて居られない。そのため誰か出勤せざるを得なくて、それは当然の如くペーペーの俺の仕事になった。 「ゔぅ、社畜にそんなものないもん」 「まじでブラックだな」 「おにーさんは?」 「俺は10〜15。16に有給使って9連休にするか悩ん「もお言わないでぇっ」 食べ終わったお皿を横に押しやって、机に突っ伏してずびずびと泣く。どうしてこうも違うんだ、社会人という括りは同じなのに全然違う。違いすぎて涙が出る。週休2日、サビ残なし、有給使えるおにーさんが高級取り。方や週休1日(たまに2日、そのためには残業)、サビ残なんて当たり前、有給はあってない(買取はしてくれる)俺が安月給。世の中不公平だ。 「振替は取れんの?」 「ゔん、4日取れる」 「どっか旅行連れてってやるよ」 「え!?」 その言葉に伏せていた顔を上げるとおにーさんはいつもの澄まし顔を少し優しく緩ませていた。ほんとに?と聞くとほんとにと頷いてくれて、行きたいところ考えておけと言われた。 どうしよう、どうしよう? 「あ!横浜観光行きたい!」 「片道30分くらいなの分かってる?」 「え、そうなの?俺、こっち来てすぐは引越しでバタバタしてて、働いてからはご存知の有様で、ろくすっぽ観光なんてしてなくて」 「…………はあ、お前今日予定は?」 「無いよお、ゲームするだけ」 「なら着替えろ、連れてってやる」 え!?ほんとに???さっきと同じことを聞く俺に、同じようにほんとにと頷いてくれたおにーさん。飛ぶように椅子から立ち上がり、寝室に着替えに行った。 着替えてリビングに戻ると、俺が食べた食器を片付けて待っていてくれたおにーさんが居て、嬉しくって飛びついた。おにーさんと電車に乗るのは久しぶりで、それがこうしてお出掛けなんて信じられない。 「デートだねえ」 「散歩だろ、たまに歩かせないと太るって言うし」 「?俺、太った?」 「変わらねえな」 「太って好みの体型じゃ無くなったら捨てる?」 「捨てない。せっかく好みに育ててんのにもったいねえ。太ったとしても俺の食事管理が悪かったせいになるしな」 おにーさん、飼い主の鏡だね。考えてみるとおにーさんが作るものはお肉だけに偏ってることはあんまり無くて、野菜も多く登場する。カロリーの計算なんかは俺は分かんないけど、俺の胃袋をがっつり掴んで離さないその味付けは優しさと懐かしさを感じつつも俺の胃袋に十分な満足感をくれて最高だ。 その上たまにこうしてデー…散歩にも連れて行ってくれるらしいし、旅行まで付いてる。ちなみにおにーさんは俺に食費も家賃も光熱費も払わせない。そんな話もしたことはあるけど、おにーさんは払えと言うどころか払ったら追い出すと言うので俺はそれ以降何も言っていない。最低限、電気の消しっぱなし、水、お湯の流しっぱなしに気をつけているくらいだ。

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