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39.
世間では今日からお盆休みらしいけど、俺には当然関係ない。今日は定時出勤でいいから朝もゆっくりで良かったはずなのに、いつもの癖で6時すぎに起きてしまって、寝るのも微妙だしどうしよう。うんうんと寝返りを打ちながら悩んでいると、お盆休みだから俺の定時出勤に合わせて少し遅く起きる予定だったらしいおにーさんを起こしてしまった。
「……なにしてんの?」
「目が覚めて、起きるか悩んでた」
「何時だよ」
「6時過ぎ」
「まあいいか。朝飯、なにがいい?」
「うーん、コーンスープ飲みたぁい」
「分かった」
そう言っておにーさんは起き上がると、俺にちゅってして出て行った!2度目のチュー。なんでしないのかなあって思ってたことを聞いたら、理由じゃなくてキスされて終わった。まあそれはいいんだけど、こうしてされるのもなんか照れる。キスよりもっと凄いことしてるから別にするのはいいんだけど、これはちょっと甘い。糖度高すぎ。
顔のほてりを冷ましてリビングに行くと、おにーさんがパジャマのまま朝ごはんの支度をしてくれている。おにーさんの腰にしがみついて見上げる。
「どうした?」
「おにーさん、もっかい」
「は?」
「もっかいして」
糖度高すぎなんて思うのに、もっかいしてとねだる自分が訳わかんないけど、したいんだから仕方ないと開き直って目を瞑る。おにーさんが笑った気配がしてすぐにおにーさんはおねだりを聞いてくれた。俺が思ってたような軽ーいキスじゃなくて、がっつり深いキスをされたのは予想外だった。
これまでこういうキスをしたことはあったけど、受け身でいるのは初めて。キスってこんなに気持ちよかったっけ?おにーさんが上手いだけ?
「ははっ、お前キスくらいしたことあるだろ?」
「うっ、あるけどっ!」
「朝勃ち?」
「………違うと思う」
「いい子。抜いてやろうか?」
「今夜にして」
朝からおにーさんにいじめられたら仕事どころじゃない。ふるふる首を振る俺に夜可愛がってやるよと言って、今度は触れるだけのキスをして俺から離れた。
やばい、今日もだ。おにーさんにムラムラする。キスもだし、その先もだし、もっとして欲しくて仕方ない。
「動きづれえよ」
「んんー、もおちょっと」
時間があるからと言い訳して、朝からもう少しだけ甘えてしがみついて今日一日頑張ろうと自分に言い聞かせた。
今日は一部出勤してる部署もあって、ポツポツと挨拶を交わしながら技術部の部屋に向かう。今日の日付と、それぞれして欲しいことが色別に書かれていて、終わればチェックを入れる。技術部ではなんとなくそれぞれ色分けしてものを使っていて、こうしたメモもそれぞれ自分の色で書く。
相談の上で仕事を託されているため、無茶な量なんかにはならず時間は余ったため自分の溜めていた仕事なんかを片付けていた。
仕事が終わり、会社を出ると阿川くんが俺のことを待っていた。俺を待つってことはミホちゃん絡み?
まさかネットで出会うはずだった女の子が実は男の人で、その人はかなりさでぃすてぃっくな感じな人でそれにハマりましたーなんてあんま言えないというか言いたくないもんね。でも俺は帰りたいの!おにーさんが家で待ってくれてるの!おかえりって言われたし、作りたてのあったかいご飯を食べたいし、お風呂に入れて欲しいし、髪の毛も乾かしてもらいたいし、エッチなことをしてギュって抱きついて寝たいの!だから早く家に帰りたい。
「今日は聞けない。俺、今日は大事な予定があるんだ」
「え?彼女?」
「作る暇ない」
「彼女じゃないの?ならマジで頼む!ミホちゃんにどうやったら会えると思う?」
「もっかい引っかかればいいんじゃない?」
ものすごぉく適当に言ったんだけど、どうにもこれは使える!と目を輝かせて感謝をされた。俺絶対に失敗した。これがミホちゃんにバレたら俺はきっと乳首を抓られる程度のことでは済まない。おにーさんに許可は求めるだろうけど、許可がおりようものなら何されるかわかんない。
「待って!やめとこ!ミホちゃんは危険!」
「なんでだよ、会うの俺だし」
「俺が困る!」
「何がだよ」
「ああもう!とにかくダメ!」
「もうそれしか手がないんだよ!」
ヤケになってるらしい阿川くんに怒鳴られる。仕方なくどうしてそんなに会いたいのかと聞くと、ミホちゃんとしてからと言うものAVは満足できないし抜いても物足りないしで堪らないらしい。身に覚えのありすぎる話についウンウンと頷いてしまいそうだった。
その後も阿川くんがいかにミホちゃんに会いたいのか、どれほど物足りないのかを聞かされた。どっちにしてもミホちゃんは阿川くんだとわかった瞬間会わないと思うし、もし会ってみて阿川くんなら何もせずに帰る気がする。どうするのかは知らないけど、どうか俺の名前は出さないで欲しいと心から祈った。
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