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遅めのお昼ご飯を挟み、他にも有名な観光名所にも行った。おにーさんってこういう観光地好きなのかなあ。
テーマパーク系ではなく、景色を楽しんだり、建物を見たりすることばっかりだった。
「お前にはつまんねえ?」
「ううん、綺麗だなあって思う」
なんだろう、日常を忘れるって感じ。
コンクリートジャングルに住む日常から、木々が生い茂る中に来るといつもの忙しい毎日が遠くに感じる。
旅行自体そんなにしたことがないし、こうしてゆっくりと観光したことは初めてと言ってもいいくらいだからすごく新鮮。
「マイナスイオンって感じ!」
「理系の奴から聞く言葉じゃねえな」
「それもそっか」
いやいやうっかり。
イオンとかの話になると同じ化学でもちょっと分野違いだけど、いくら何でもマイナスイオンは酷かった、反省。
おにーさんは感じるタイプなのか、写真を撮ったりはせずにゆっくりと回っていた。おにーさんとの旅行は賑やかで騒がしくなるんじゃなくて、静かでまったりとした日常を忘れる旅行。こんな旅行もすごくいいなあ。
「明日はお前が好きそうなところ行ってから帰るぞ」
「え?どこ!?」
「水族館」
「ほんと!?」
「ほんと」
「おにーさん大好き!」
「お前なあ」
水族館はすごく好き。動物園より水族館。夢の国より水族館。夢の国はいったことないけど、あそこに行くなら水族館に2回行きたい。
俺が好きそうなところもきちんと組み込んでくれるあたり本当におにーさんは優しい。外じゃなかったら抱きついてたと思う(正確には抱きつこうとして避けられた)。
1日の最後の目的地は今日泊まるらしい旅館。
俺の旅行といえば修学旅行が基本だからホテルばっかで旅館なんて初めてだった。ホテルとは全然違った趣がある。
おにーさんが受付で色々と書いてる時にパンフレットを見ると大浴場の他に貸切風呂が3つ、露天風呂が1つあるらしく、どれに行くか悩む。部屋風呂もきちんとあるらしいけどせっかくだし温泉がいいなあ。
だけど食堂とかレストランがない。どこで食べるんだろ?おにーさんは受付の人と食事は19時でって話をしていたからどこかで食べれるはずなんだけど、どこに行くんだろ。
受付を済ませたおにーさんが歩くのでそれにてこてこ付いて歩く。
「おにーさん」
「なんだ?」
「どこでご飯食べるの?食堂ないよ?」
「部屋に決まってんだろ」
「?」
「泊まる部屋で食うの。夜も明日の朝も運んできてくれる」
目を剥いて驚く俺に、旅館じゃこういうところも多いぞと言うおにーさん。旅館に泊まったことない人にとってはこういうのは慣れないんだって。旅館に来ても日常を忘れるような旅行になりそうだ。
部屋に着くとまずは探検をする俺。押入れや引き出しの中を全部見て、扉も全部開ける。部屋の中央に置かれた箱の中には湯呑み茶碗にお茶っぱやお茶菓子なんかも入っていてびっくりした。食べていいの?と聞けば頷いてくれたおにーさんに、2つとも?と聞いた俺に呆れた調子で好きにしろと言ってくれたので遠慮なく食べた。中にあんこが入っていてそれはそれは上品な美味しさだった。
「おにーさん、旅館ってすごいねえ。貸切風呂空いてるかなあ」
「最初から予約してる」
「え、ほんと!?」
「あるなら入らなきゃ損だろ」
「わあい!やったあ!何時から?」
「風呂は21時。ちょっと遅めにしてる」
はあいと返事をして、バッグからお風呂セットを出しておいた。楽しみにしすぎって笑われたけど、仕方ない。貸切風呂なんて初めてだからワクワクが止まらない。
部屋にあった旅館のパンフレットを見てると夜の10時半になると夜鳴きそばを無料でやっていたり、受付に無料のジュースコーナーがあったりと俺には馴染みのないサービスに溢れていた。
初めてのことに興奮しっ放しであちこち旅館をうろついているうちに時間が経ち、食事も近くなったので部屋に戻ると浴衣に着替えていたおにーさんが居た。うわぁ、普段着と違ってまたこれは。ムラムラする相手の浴衣姿ってうん、なんかやばい。どーしよう、おにーさんの首とかクチュクチュ舐めたい。そんで見本とか言って噛まれたり……
ブンブンと頭を振って、おかしな自分の考えを追い出した。
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