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おにーさんに促されるままに俺も浴衣に着替えた。おにーさんは俺が浴衣だろうがなんも思わないだろうけど(普段もっと露出がひどい)、俺はなんかもうだめだ。ムラムラする。裸なんてたくさん見てるけど、チラチラ見える鎖骨とか胸板とかがエッチい。 そんなことを考えている俺を置いて、仲居さんが料理を並べてくれた。机の上に溢れんばかりに置かれていく料理に驚いていると、ちょこちょこ運ばず一気に持ってきてもらうように頼んでおいたとおにーさんが教えてくれた。 「ほんとは時間差で出てくるの?」 「ああ。けど俺は米だけで食べるよりも米とおかずで食べたいし、何度も出入りされるもゆっくり食える気しねえからまとめてもらってんの」 どうやら予約の時にそれを伝えていればそんな風にもできるらしい。1度に全部が並んでるから机の上は賑やかで狭苦しいけど、すごく美味しそう。 いただきますと言って食べ始める。 料理名も食べる順番も全く分からないけど、おにーさんしかいないから気を遣わなくていいからこんな豪華な料理を前に気楽に食べれた。これは部屋食の魅力だなあなんて感じた。そして並べられた時には多くて食べきれる自信はなかったのに、気づけば全部平らげていた。フルーツの盛り合わせはおにーさんの分までねだって食べて、もう満腹だ。 「お腹いっぱあい」 「だろうな」 畳に寝転がる俺と、座椅子にもたれかかるおにーさん。2人揃って寛ぎすぎな中、仲居さんが食器を引きにやって来てくれて、さらには布団まで敷いてくれた。おにーさんにすごいと連呼する俺に、旅館じゃ良くあることだと教えてくれるけどほんとに?ここがいい旅館なだけじゃない?とつい疑ってしまった。 仲居さん達は布団を敷いてくれたけど、ちょっとこの敷き方はやだなあ。 隣に並んだ布団。敷布団が30センチばかり離れている。これじゃおにーさんにしがみついた俺は畳で寝ることになるからヨイショヨイショと布団をくっつけた。 「何してんの」 「こうしなきゃ俺畳で寝ることになるもん」 「なんで俺にしがみついて寝る気なんだよ」 「いつものことじゃん」 はあとため息をついて受け入れたおにーさんのそばに行き足元に座り込む。膝に顎を乗せて見上げるとヨシヨシと撫でてくれた。それが気持ちよくてしばらくそのまま過ごした。 いい時間になって貸切風呂に移動する。 お風呂に行く時用にって部屋にお風呂用のバッグみたいなのも用意されていたし、おにーさんは受付に寄って新しい浴衣なんかも借りたりしていた。どうやら俺の知らないサービスはまだまだありそうだった。 「おにーさん、もしかして貸切風呂って露天風呂?」 「旅館のパンフレット読んでたのに見てなかったのか?」 「貸切ってだけで豪華なのに露天風呂!」 下駄に履き替えて外に出て歩く。ちらほら歩いてる人もいるけど、ほとんどの人はこの先にある露天風呂に向かっているらしい。俺とおにーさんは途中道を外れて予約してくれていた貸切風呂の方に向かう。 その先にあったのはこじんまりした木造っぽい建物。重そうな引き戸を開けると小さめの脱衣所と洗面台。この感じからして4人くらいまでなら一気に入れそうな感じ。浴衣を脱いでその先の引き戸を開けると、ホカホカの湯気の立つ温泉に、シャワーが3口。思ったよりもお風呂が広くてびっくりする。 「おにーさんおにーさん!広いよ!」 「はしゃぐな、滑ってこけるぞ」 「そんなに子どもじゃないってば」 掛け湯をしてからお湯に入ると、ちょっと熱めの湯加減で肩を出して入るのにちょうどいい。乳白色のお湯、成分は……なんて考えそうになった社畜な自分を心の中で押さえつけて、今はこの気持ちよさだけを味わおうと決めた。 あったかいお湯に浸かって、頬がほてったおにーさんが色っぽい。お風呂なんて何度も一緒に入ったのにちょっと雰囲気が違うだけでこうもクラクラするとは思わなかった。 「俺も30になったらおにーさんみたいになれるかなあ」 「?」 「大人の色気!」 「そんなバカなこと言うことからやめような」 そう言って俺を見て、さらに一言付け足した。 「誠は30になってもそのまんまっぽい」 褒められてるのかバカにされてるのか微妙。 おにーさんは意地悪な顔じゃなくていつものすまし顔でさらっと言ってるから判断に悩む。むっとする俺を見て、そのまんまでいいんだよと笑って頭を撫でてくれた。濡れた腕からお湯が伝うのは、なんとなくエッチい。 「おにーさんどうしよう………」 「なにが?」 「エッチな気分に、なっちゃった」 俺の頭を撫でてたその手が止まり、仕方ねえなと言ってちゅっとしてくれた。そんなんじゃ全然足りなくてもっととねだって膝に乗り上がる。おにーさんにムラムラする、ほてったおにーさんが色っぽい、お湯が滴ってすごくエッチい。 「誠、ここではしねえよ」 「分かってるよ」 分かってるけど、ちゅーくらいいいじゃん。 おにーさんはここではしないなんて言いながら、意地悪な手が俺の乳首をいじめる。言動が一致してないけど、俺だって分かってるなんて言いながらおにーさんに自分の性器を押し付けてるんだから説得力は全くない。

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