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67.
バスに揺られて1時間も経たないうちに夢の国の大型駐車場に停まったバス。これからは各自自由行動で、夜のホテルの宴会場を貸し切っての夜ご飯まではフリータイムだ。
特に誰かとまわる約束なんしてなかったけど、阿川くんに拉致された。拉致されるままに喫茶店、というかカフェというかレストランみたいなところに入った。
「伊藤くん、なんでそんなミホちゃんのこと詳しいんだよ」
「別に詳しくないよ」
「俺、いまだにちゃんとした連絡先も知らないんだよ」
「え?」
「本当に体だけなのかな」
「エッチはしてるの?」
「入れさせてはくれないけど」
「露骨!もう少しオブラートに包んで!」
まあ、ミホちゃんなら焦らしに焦らして与えないなんてこと普通にしそうだもんなあ。基本的に甘やかすタイプのおにーさんと、基本的にツンツンしてるミホちゃん。ねだれば応えてくれるおにーさんと違って、ミホちゃんは嫌がることをしたくなると自分でも言っていた。
「ミホちゃんがさ、そんなに俺とやりたいなら生意気でいるなら飼ってやっても良いとか言い出し「ぶぅっ」
「伊藤くん!?」
ゴホッ、ゴホッと噎せる俺とどうしたと心配する阿川くん。ミホちゃん、ついに人を飼うの?というか阿川くんどんだけしつこかったの。
阿川くんは人を飼うってどういうこと?とか言ってるけど目の前に飼われてる人がいるから。
「あと、飼われる見本は誠くんとか言ってたんだけどどう言うこと?」
「はっ?俺?ミホちゃんは俺とか好みじゃないでしょ」
「?」
2人して首を傾げて向き合う。おかしいな、ミホちゃんは俺はタイプじゃないと言い切っていた。それにはおにーさんだって同意してたから間違いない。それなのに俺が見本?ミホちゃん曰くおにーさん=飼い主に懐きすぎな俺?
タイプじゃないものを見本にするってどう言うこと???
「伊藤くんとミホちゃんって、何繋がり?」
「…………ミホちゃんのおにーさんと俺が仲良しなの」
仲良しというか、一緒に住んでて飼われてる。そこまで言う必要はないから言わないけど、俺とミホちゃんの繋がりといえばおにーさんだ。
そうなんだと納得して、そしてすぐに顔を上げた。
「もしかしてミホちゃんの名前知ってる!?」
「知ってるけど言わない。言ったら俺が何されるか分かんないもん」
「ミホちゃんはそんな節操なしじゃな、くもな、い?」
「どっちだよ」
「分からん」
ミホちゃんにだって節操はあると思うけど、一般的なそれよりも緩い。そして、ミホちゃんの場合最後までせずに痛いことだけ与えるなんてことも笑ってやりそう。
「ミホちゃんのこと好きなら応援するけど、ただミホちゃんとのエッチをしたいだけなら違う人探してね。俺、ミホちゃんが悲しい顔してるのやだ」
「伊藤くん、ミホちゃんのこともしかし「しないから」
ミホちゃんは友達でたまにカットの練習台。
普通に仲良くお話ししてるけど、それはミホちゃんが俺に警戒しないのと、俺もミホちゃんを警戒しないからだと思う。ミホちゃんがさでぃすてぃっくだと知っていてもやっぱり優しいなあと思うし、おにーさんにそっくりな笑い方とか口癖がすごく好き。だから、できるなら悲しい顔も寂しい顔もして欲しくない。
「はああ、人を飼うってミホちゃんヤバイ人?」
「最初からヤバイ人でしょ。笑ったまま人の乳首抓る人だもん」
「は!?え、伊藤くんとミホちゃんやった!?」
「してない。ちょっと面白半分でされただけ。でも、優しいよミホちゃん」
「………そうなのか?」
「そうだよ」
ウンウンと唸る阿川くんは冷たくなったホットコーヒーを飲んで項垂れた。こんな話を聞くために俺はあの残業地獄だったのか?と少しげんなりした。
それからしばらくして、早めのお昼にとたまたま入ってきた同期と合流して、昼からは乗り物にも乗った。絶叫マシーンもほとんど乗ったことなかったけど、並ぶ価値はあったと思う。パークに慣れた子が居たから、うまくファストパスを使いながら結構な乗り物に乗れて楽しかった。
何だかんだ遊び始めると、残業のことなんて忘れて普通に楽しく遊ぶほどには楽しいところだった。
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