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夜の宴会では飲むや歌うわの大騒ぎで、これがおにーさんの言ってた宴会地獄かぁとぼんやり眺めた。お酒は好きだけどあんまり強くない俺は、ちびちび飲むだけにしている。同期の中にも出来上がっている人もちらほらいるし、もっと年配の方でもぐでんぐでんにからみ酒している人もいる。 「いとーくん、飲んでるぅ?」 「うわ、鈴木さん酔ってますね」 「飲まなきゃ損損!野田さんも内村さんもあっちで出来上がってるよ〜」 ふらふら鈴木さんが歩いて行った先には確かに野田さんと内村さんが居て、完全に出来上がっている。この2人は飲むと真っ赤になるらしい。顔が、というよりも全身が赤い。 「俺、水持ってきましょうか?」 「日頃の鬱憤忘れて飲もーよ」 「そうそう!こんな時くらい!」 「こんな時くらい全部忘れて」 3人して俺にお酒を勧めてくるけど、それ無理。 ワインに日本酒に焼酎?俺が飲める気しないやつ。 「俺、本当にお酒弱いんでっ」 「強い人が何とかしてくれるよ〜」 「そうそう、俺なんてもう足立たないよ」 「俺も俺も〜」 それ自信満々に言うことじゃないし! 嫌がる俺に酒を勧めるなんて絶対にしちゃダメなことなのに、お酒で理性が飛んでなきゃこんなことする3人じゃないのに、今は一緒に飲むことしか考えてない……。 仕方なく俺は自分のビールを持ってきて、チビチビと飲んだ。それでも長時間だらだらと飲んだせいか、俺は酔っ払っていて、いつ宴会が終わったのかも、どうやって部屋に帰ったのかも覚えていなかった。 気付いた時には日が変わり朝になっていて、3人部屋のベッドの上で寝ていた。 「俺、どうやって帰ってきたっけ……?」 「阿川くんに抱かれて帰ってたぞ」 「うそお最悪」 「最悪なのは俺だから!伊藤くん、部屋に連れて行こうとした俺になんて言ったか覚えてる?」 「?全然覚えてない」 「違う、やだ、おにーじゃないってバシバシ叩いてきたんだよ」 まじか。俺そんなことしたの?最近では、と言うよりおっきくなって抱っこされることなんて当然減って、今ではおにーさんに抱っこされるくらい。うわあ俺そんな恥ずかしいこと言ったの?どうしよう。 「伊藤くん、いくつになるまでお兄ちゃんっ子してるんだよ」 「あはは、卒業する」 嘘だけど。兄離れは出来てるけどおにーさん離れは出来ない。残念ながらする気もない。 「ってか、伊藤くんめっちゃ軽かったんだけど何キロ?」 「51くらい」 「「かっる!!」 増えないんだよなあ。おにーさんの美味しいご飯をお腹いっぱい食べてるんだけど、太る気配はない。俺の身長だと理想体重は63キロって言われるから元から細めではあったけど今ほどではなかった。 それからくだらない話をしながら交代でシャワーを浴びて、朝食会場に向かった。2日酔いらしく青い顔をしたうちの部署のメンバー達。昨日はあんなにテンション高かったのに、今日はグロい。 「おはようございます」 「おはよう伊藤くん元気だね」 「2日酔い、大丈夫ですか?」 「いやあ、飲みすぎちゃったね。気持ち悪いし頭痛がひどいよ」 「あとでキャベジンでも買ってきましょうか?」 「いいの?できたら内村くんの分も買ってきてあげて」 「そうします。鈴木さんは大丈夫そうですか?」 「………」 話せるらしい野田さんと、話す気力もない内村さんと鈴木さん。あとでキャベジン3本買ってきてあげよう。 俺は食べるのに問題もなかったから朝ごはんをきちんと食べて、ロビーにキャベジンを買いに行って3人に渡した。染み渡るって言いながらキャベジンを一気飲みして、よっしゃ遊ぶぞと立ち上がった3人はまるでゾンビのようだと俺思った。 キャベジンでドーピングしちゃうなら俺、買うべきじゃなかったなあと少し反省した。

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