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集合した駅に着き、各自解散。まだ早い時間なのでお茶していく人も多い中、俺は迷わず帰りの電車に乗り込む。早く家に帰っておにーさんにゴロゴロしたい。 行きよりも重たくなった荷物と共に家に帰ると、キッチンに立つおにーさんがおかえりと言ってくれた。 「おにーさんっ、ただいまあ」 迷わず抱きつく俺と、見越してか火を消していたおにーさん。グリグリと甘える俺を撫でてくれるその手が好き。このしっかりした体と暖かい体温も大好き。 「行きよりだいぶ荷物多くね?」 「お菓子いっぱい買ってきた!」 「なら今日のおやついらねえな?」 「おやつも食べる!おにーさんも食べたいのあったら食べてね」 「はいはい。手ぇ洗ってこい。おやつ用意するから」 はあいと返事して、最後にぎゅうっと強く抱きしめて洗面台に手を洗いに行った。リビングに戻ると机の上にエッグタルトがあって、それが今日のおやつだ。椅子に座ってもぐもぐと食べる。 「おにーさん、昨日ありがとぉ。バスでフルーツサンド見てすごい嬉しかった」 「あんな暗い顔していく場所じゃねえしな。楽しめたか?」 「うーん、そこそこ。おにーさんと行った温泉の方が楽しかった」 おにーさんは今度は江ノ島とシーパラだなって言って俺の前にあったかいカフェオレも置いてくれた。 置かれたカフェオレは温かいけど飲みやすい温度で本当に気が利くなあと思う。実家じゃ母さんが淹れるより先に父さんが立ち上がって、そんな父さんに母さんが私のも入れといて〜と頼んでるほどに母さんはズボラだ。 「おにーさんって、結婚しなくても生きていけそうだねえ」 「お前は誰かに飼われてないと死にそうだな」 「うん、死にそう」 だから捨てないでねと心の中で付け足す。 おにーさんに甘えまくって、生活のほとんどを依存している自覚がある。おにーさんは従順なのが好みって言ってたけど、こうして甘やかして自分に対して素直にさせてるんだろうなあと思う。それをなんとなく察してても俺はおにーさんに甘えちゃうから、まあおにーさんの思うツボだ。 「おにーさん」 「どうした?」 「ぎゅーして」 「はいはい」 椅子に座って手を伸ばすだけの俺を抱き上げるようにぎゅっとしてくれたおにーさんに抱きつく。やっぱり俺の休日はこれに限る。 「ふふっ」 「ん?」 「俺ね、寝ててもおにーさんに抱っこされるの覚えてるよ」 「はあ?」 「昨日お酒飲んで寝ちゃってね。阿川くんが部屋まで運んでくれたらしいんだけど、おにーさんじゃないって暴れてたんだって」 ぎゅうっとおにーさんの体温を感じて幸せに浸っていたのに、おにーさんに落っことされた。と言ってもそんなに体のダメージはない。こんなことされたことなくて、ぽかんと見上げる。 おにーさんは意地悪な顔で笑って、俺を見た。 「悪い子だなあ」 「?いい子だよ、おにーさんじゃなきゃ嫌って寝てても思ってるんだもん」 「悪い子だろ。他の誰かに抱かれてきたなんてなあ」 「抱かれって……運んでくれただけだよ?」 「それでも俺は気に喰わない」 そんなあ!阿川くんになんかに(失礼)尻尾振ったりしないのに!もともと酔わないように遠慮してたのに長時間飲むとやっぱりそれなりに回って、だからえーっと……。 「だから今日は抱っこも抱きつくのも禁止。そんくらいで許してやるよ」 「やだ!やだやだやだ!」 「躾。悪い子にはお仕置きだろ」 「俺悪い子じゃないもん」 「はいはい。抱っこと抱きつくこと以外はいつも通りでいいからこれで我慢な」 「ンッ、ふ、ぁっ」 おにーさんの手が俺の顔を上げてキスされる。キスも大好きだけど、抱きつこうとしたらすかさずおにーさんの方が距離を取る。 もっとちゅーしてと言えばしてくれるのに、ぎゅってするのは絶対にさせてくれないししてくれない。 おにーさんの暖かい体温を感じれないのが寂しい。 本当に抱きつくの禁止以外はいつも通りで、頭も撫でてくれるしちゅーもしてくれる。くっつきたくなってもそれだけダメとやんわり言われる。 基本的に俺を甘やかすおにーさんの、甘くて辛いお仕置きだった。いつもなら飛びつきたくなったら飛びついて、そうしたらよしよしと撫でてくれた。ぎゅーしてって言えばぎゅってしてくれた。寝るときだって、おにーさんにしがみつくようにして寝ていた。 そのどれもが出来なくて、とても辛いお仕置きだった。

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