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俺とおにーさんも年末年始休暇に入り、この俺が9連休なんて奇跡的な事件が起きた。ゴールデンウィークもお盆も出勤したのに、9連休! どこに行っても混んでるだろうけど、おにーさんが出かけると言うので俺は付いていくことにした。気分はデートだ。 「おにーさん何買うの?」 「コーヒー豆。年末年始用に多めにな」 「俺のおやつは?」 「それも買うから」 わあーいと喜んで歩く俺。 おにーさんに付いて歩いた先には当然喫茶店があって、コーヒーのいい匂いが漂っていた。けど、俺の目線はショーケースに釘付けだった。 「…………gください」 「かしこまりました」 「待ってる間にアメリカン1つと、誠?誠!」 「ふあっ!?え、はい!はい!」 「なんかあったのか?」 「え、っと、、、厚切りフレンチトーストぉ」 ショーケースに飾られた食べられないはずの厚切りフレンチトーストが美味しそうすぎてやばい。 「おにーさん、今日のおやつこれがいい」 「飲み物は?」 「うーん、と。おにーさんと同じ!」 砂糖たっぷり入れて飲もう。フレンチトーストの甘さ次第では甘さ控えめにしたいからココアだったりカフェオレみたいに最初から甘いものは避けた。 おにーさんはコーヒー豆を用意してもらう間にこのお店でコーヒーを飲むのが好きらしい。いつもここに買いに来ると言っていた。 席でしばらく待っていると先にアメリカンコーヒーが出てきて、おにーさんは何も入れずに飲む。いつもブラックなのは知ってるけど、そんなに美味しいのかなあ。。 「ゔっ、大人の飲み物……」 「お子様舌は諦めろ」 「むうう」 「こういうのは好きなように飲めばいいんだよ。甘かろうが苦かろうがお前が美味しいって思う飲み方すればいい」 おにーさんがそう言うならいいかなあ。俺がお子様舌なの知ってくれてるし、おにーさんの前で格好つけるなんて無意味なことはしない。俺がどれほど何もできないダメ人間か、どれほどぐうたらな人間かなんて家族以上に知ってそうなおにーさん相手に猫なんて被らない。 開き直ってシュガーポットから砂糖を2つ入れ、ミルクも加えて飲みやすいコーヒーにしたところで厚切りフレンチトーストが登場した。ショーケースからはなんの匂いもしなかったけど、牛乳と卵とお砂糖の柔らかくて甘い匂いが漂ってくる。トーストの上に乗ったバニラアイスは溶け始めていて、見ただけで美味しい。 「いただきますっ!」 「どうぞ」 厚みがあるのにしっかり味が染みていてすごく美味しい。おにーさんもいる?と言うと見てるだけでいいと言われた。そんなに苦いコーヒーと一緒なんだからきっといい塩梅になると思うけど、俺はお言葉に甘えて独り占めして食べた。 おやつというには分厚すぎるフレンチトーストにかなりの満腹感を得て、砂糖を控えめにしておいたコーヒーはフレンチトーストと相性抜群で最高に美味しいお店だった。 おやつを食べ終わってホッと一息ついてから、おにーさんと年末の買い物に行く。主に食料品と生活用品の買い出しらしい。 どっちも一度に買えるようなところに移動して、おにーさんは必要なものをぽんぽんカゴに入れる。 「誠、雑煮っておすましか白味噌どっちだ?」 「どっちでも食べるよ。でもお餅は焼いたのより煮込んだやつの方が好き」 「はいはい、煮ればいいんだな」 「うん。おにーさんお雑煮も作るんだね」 「年越しそばも食うぞ」 「エビ天ね!」 「かき揚げだろ」 「むむむ、小エビ乗せてくれるならかき揚げでもいいよ」 「どんだけエビに拘んだよ」 エビ好きだもん。あったかいお蕎麦やうどんに乗ってる衣がぐずぐずになったエビ天は特に好き。エビフライよりエビ天。でも、 「おにーさん、エビのお刺身食べたい」 「いいよ。ほかにツマミでも作って酒も買う?」 「いいの?俺弱いよお」 「知ってる」 おにーさんはそう飲んでる姿は見ないけど、それでも酔ってる姿は一度だって見たことない。聞くところによるとザルというやつらしい。故におにーさんはお酒を飲んでふわふわする気持ちだったり、酔いが回って気持ちいい感じとかを知らないからお酒を飲む楽しさは全く分からないと言っていた。 店内を周りエビを含むお刺身とおつまみの材料、お酒と日用品を買って、両手いっぱいの荷物を持って家に帰った。

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