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「誠、今は依存してるの?」
「かなり」
俺の記憶にある限り、あまり彩綾に甘えた覚えはない。そうは言っても、忙しいって言ってんだから分かってくれと勝手な気持ちを押し付けてたのは甘えてたってことなんだけど、おにーさんにするような甘え方はしなかった。
「誠ってさすが末っ子っていうか。大体のこと器用にこなすから依存するとかイメージ湧かない」
「俺も。自分がこんなに誰かに甘えて誰かが居ないと生きていけないなんて思わなかった」
「言い過ぎ」
「そぉでもないんだって。もう禁断症状出てるよ、恋しくて寝れない」
嘘、ほんとは寝れるけど、メッセージでもいいからおにーさんにおやすみって挨拶してからじゃないと寝れない。ほんとなら声聞きたいけど、声聞いたらぎゅってして欲しくなるのも分かってるから電話は我慢している。
本当は土曜日に帰るつもりだったけど、多分明日も17時半頃には終わるんだからそのまま帰ろうかなんて思ってるくらいおにーさんに早く会いたい。
「ねえ、どんな人?」
「うん?」
その後、彩綾は年上?だとか実に女子の恋話らしいことを聞いてくる。自分で言うのもあれだけど、仮にも好きな相手の好きな人?の話なんて聞いて楽しいんだろうか。
そう思う俺と違って、彩綾はごく淡々と聞いてくる。そして、俺も答えられる範囲で嘘をつかずに答える。当然ながら、元々彼女が居たし、目の前の彩綾と付き合っていてエッチもしていた俺が男に飼われてるとは思わないようで、性別を聞かれることはなかった。
「誠、それヒモだよ」
「違うって!働いてるから!」
「どう違うの?家賃も光熱費も生活費も全部払ってもらってるって……情けない」
彩綾まで母さんと同じこと言うなんて……。
俺が払うって言えば、払うなら追い出すぞって意味わかんないこと言われてるんだもん。追い出されるのは絶対嫌で、そうなったら俺に払う術はない。その分を貯金に回すくらいしか出来なくて貯金が増えていく。
おにーさんは俺1人養ったところで生活に変わりはないらしく、貯金もしていると言っていた。どんだけ稼いでるかは、聞きたくない(俺が悲しくなるから)。
「しかも付き合ってすらないって、ほんと情けない。収入格差は仕方ないとしても、告白くらい年下でも収入低くてもできるでしょ」
「うぐっ、いや、だって」
「言い訳しない」
「でも、だって」
「だってなに?誠がいつも言ってたじゃん。体だけとかダメだよって」
「今は、その、愛玩用、というか……?」
「生活費出させてセフレにしてるって、サイテー」
待って!?あらぬ誤解!
彩綾から突き刺さるような冷たい目で見られる。
確かにエッチはしてるけどセフレってわけでもなくて、本当にただ愛玩用。大切に可愛がられてるペットっていうかなんというか!俺がされてる立場だから!
そんな女の人に酷いことしないって!
だけど言い訳も思いつかずしどろもどろする俺を彩綾はため息と視線で責める。なにやってんの?女の人に面倒見てもらって、付き合ってもないのにエッチもさせるなんてサイテーって聞こえてくるようだ。
「誠がそんな人だとは思わなかった」
「待って!誤解がひどい!」
「どこが誤解だっていうの?」
「全面的に!」
「生活費出してもらって家に住ませてもらって、そういうことまでさせてるのに?」
「お願いそんな目で見んのやめて!」
言葉の攻撃は止まったけど、視線は相変わらず冷たい。ものっすごい、冷たい。その冷たさが痛い。
「彩綾」
「彩綾のこと、俺信じてる」
「うん?」
「俺、今男の人に飼われてんの」
「固まってそうだからもっかい言おうか?」
「………うん」
「俺、男の人に飼われてる。俺が今大事だって思ってるのは、男の人だよ」
誤解を解く必要はないんだけど、このまま終わるのも気が悪い。彩綾の中でどう俺のことが終わるのかは分からないけど、女の人に集ってセフレにするような最低なやつだったで終わるのは、ちょっとやだ。
彩綾だって頭の回転は早い方だけど、予想しなかった言葉に処理能力が追いついていないらしく呆然と俺を見ては机に視線を落とし、もう一度俺に視線を向けて頭を振った。かなり混乱していることは見ているだけでも十分に感じ取れるほどだった。
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