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112.
機器のガス切れで終わるのが遅かったし、後輩には飲みに行こうとちょっとしつこく誘われたけどそんなの全て断って帰路に着いた。
玄関を開けて、スーツケースを置き去りにして身一つでリビングに駆け込む。立ち上がろうとしてたおにーさんにぎゅっと抱きついておかえりをねだった。
「おにーさん、後でひどいことするの?」
「はあ?」
「だっておかしいよ。平日なのにおやつがあったし、お風呂入れてくれるなんてそぉないもん」
「甘やかしたいだけだから気にすんな」
「後で酷いことするからその分先に甘えさせてるだけじゃない?」
ゆっくり湯船に浸かって、おにーさんが後ろからぎゅってしてくれる。お風呂でこうしてくれるなんて、最近では滅多にないので後で何かされるんじゃ?とつい聞いてしまった。
出張の後にしてと言ったものの存在を俺は忘れてないし、かなりバカになったとはいえ痛いことは普通に痛い。だからおにーさんがただ痛めつけようとしたなら、俺はただ悲鳴をあげるだけなんてことだってあり得る(そうなったことは今の所ないけど)。
こんなに甘やかされるなんて裏があると疑う俺にイラっとしたのか、舌打ちをしてされたいならするけど?と言われて、俺は秒でごめんなさいと謝ることになった。
「お前だけじゃねえんだよ」
「へ?なにが?」
「寂しかったの」
え?と振り向こうとするけど、おにーさんはがっちり俺に腕を回して振り向かせない。がっちり俺を抱きしめたまま、お前が居ないせいで調子が狂いっぱなしだと苛立たしそうに言い捨てた。
回された手が俺の体を好きなように撫でてきてムラムラする。おにーさんばっかりずるいと体を揺らしておにーさんの性器に体を擦り付けた。
「お前、ほんと可愛いことすんな」
「へっ!?うわっ」
ふっと笑うのが聞こえて、その後に優しい声でそんなことを言われて驚いた俺はつるんと体を滑らせた。そんな俺を支えて大丈夫か?なんて聞いてくる声も優しい。俺は壊れた人形みたいにコクコクと頷いて、もお上がる!とおにーさんから逃げた。
いつものすました顔のおにーさんも、意地悪くニンマリ笑うおにーさんも、疲れて甘えん坊のおにーさんも大好きだけど。この甘ったるいおにーさんは、好きと言うか、大好きと言うか、もうやばい。俺の語彙力じゃ言い表せない恋しさと愛おしさが溢れてる。
続いてお風呂から上がったおにーさんは髪も乾かさないままソファに沈む俺を見てドライヤーしてやるからおいでと言う。むっとしたまま、それでもおにーさんの足元に座り込んだ俺はよく躾が行き届いていると思った。
頭が乾く頃には日が変わりそうな時間になっていて、何か言うわけでもなく2人してベッドに入る。そして俺はおにーさんをじいっと見た。
「おにーさん」
「しねえよ」
「なんで!?」
なんで言いたいことがわかったの!?そしてなんで断るの?時間はちょっと遅いけど、明日は土曜日だしちょっとくらい夜更かししたって問題ないよ?
「そんな目で見んな」
「うぅ、だってえ」
「言っただろ?俺もお前がいなくて寂しかったんだよ。今日はただ甘やかしてやりてえの」
甘やかしてくれるのは嬉しいけど、もしかしてやっぱり後でひどいことするってこと?おにーさんを見上げる俺が不安そうな顔をしていたからか、優しく笑って頭を撫でてくれる。
「別にひどいことしねえよ。素直に甘えとけ」
「おにーさん、これ以上俺をおにーさん依存症にしてどぉする気。もお長期出張なんてやだ」
「?」
「おにーさんに会いたくて、恋しくて、爆発しそうだった」
「ついに頭もバカなったのか?」
本気で心配しているのか、おでこに手を当てて熱を確かめ、目線を合わせて俺の目が虚じゃないかも確認する。あまりに失礼なその行動にムッと睨むと、大丈夫そうだなと笑った。
「そう怒んなって」
「………おやすみのちゅー、してくれるならいいよ」
おにーさんは笑うこともなくちゅーしてくれて、そのちゅーがおやすみのちゅーと言うには深くしっとりしたちゅーで、うっかり下半身がおっきした俺は悶々とした気持ちで眠ることになった。
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