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エッチなことをせずに寝た翌日。おにーさんに誘われるままに買い物に出たことを後悔する。
「やだやだやだやだやだっ!」
「うるさい」
「なんで!?食料品は?日用品は?俺のおやつは?」
「この後モールにでも行けば済むだろ」
「ここには入りたくない!」
「俺も入んの初めて」
え!?おにーさんと初めて出来ちゃ、って流されるな俺!ここがどんなお店か分かってるだろ!分かってなくて恥搔いた数年前とは違うんだから!
その店は無駄なほどに全国展開で、俺の地元にもある。というか高校の通学路にあった。本屋を名乗るその店は高校生の俺から見ても不思議、というか怪しげで当時の俺は怪しいからと入らなかった。ここがそういうエッチなおもちゃや本、DVDを取り扱うお店だと知ったのは兄たちとの何気ない会話からだった気がする。
そんなことは大した問題ではない。なんでこんなところに連れてきたの!!!
「こういうところってどうせいろんなもん置いてんだろ」
「………だろぉね」
「お前の好奇心が面白くって連れてきたくなったんだよ」
「穂高さん、1人で入ったらいいじゃん」
「いいの?」
「へ?」
「お前の意見も聞かずに何買うか分かんねえよ?」
まさに渋々、渋々付いて行かざるを得なくなった俺はできるだけ俯いて何も視界に入れない。入れな、いはずだった。
「ふおおお!すごい!昔よりすっごいリアル!うわあ!」
「見て!胸!胸だあ!うわあっ、ぷるぷるだ!」
「うわっ、えっぐぅ、こんなの凶器じゃん」
初めて入ったそういうお店の中は、売ってるものがちょっとアレなだけで普通だった。店員さんがエッチいとかなくて、レジなんかは店員さんの手しか見えない。
そして売り場に溢れるのはエッチなおもちゃやらコスプレ用の服が目立って、その奥に本やらDVDがあるらしい。
「うるさい」
「あたっ!」
「ちょっとは静かにしろ」
「はあい」
ペチンと軽く頭を叩かれて、声のトーンを落とす。おにーさんに嫌がってたとは思えねえなって笑われてるけど仕方ない。だって昔俺が興味を持った時よりもレパートリーが多いオナホールに、胸を模したぷるんぷるんした何か。バイブレーションだったりディルドなんかは見るだけで恐ろしいものもある。
嫌がってたのも忘れて奥へ奥へ進み、本やDVDを見る。うわあ、エッチい。エッチな女の人ばっかりだ。
「そういうのは買ってやんねえよ」
「………いらない」
「だろうな」
ニンマリ笑って、こんなんじゃどうせ抜けないだろって言ってくる。その通りなので俺は唸るしかできない。エッチだとは思うし、そりゃ多分見たらおっきはするんだろうけど射精には至らないと思う。
「欲しいものあれば言えよ、買ってやるから」
「ほんとに?」
「なんかあんの?」
「うん!」
おにーさんは意外そうにするけど、欲しいものはあった。いそいそと持ってくると明らかに嫌そうな顔をしたおにーさんに笑いそうになるけど、俺はこれが欲しい。
「お前、それ何用か知ってる?」
「?枕じゃないの?俺、一回でいいからおっぱい枕してみたかった」
できるなら人が良いけど、俺の恋人におっぱいはない。あったかくて安心はするけど、この柔らかいものに埋もれて眠ってみたかった。俺の超ささやかでどうでも良い夢がこんなもので叶うのかとホクホクしている。
ニコニコとそれを持つ俺を見て、おにーさんは深い深いため息とともにこれの本来の使用用途を教えてくれた。それを聞いて俺はしょぼんと棚に商品を戻すのだった。
その後も商品を物色するけど、俺が欲しいなと感じるものはない。
「ねえ穂高さん」
「なんだ?」
「なんでバイブとかディルドのコーナーはスルーなの?」
「欲しいのか?」
「違うけど」
普通(?)こういうおもちゃの王道ってバイブやディルド、ローターとかじゃないの?おにーさんはそんなのは店内を見渡した時に見ただけで、興味はなさそうだった。最後までする前、おにーさんは俺にああいうおもちゃを入れたりはしたけどエッチをしてからは俺のお尻はおにーさんのおちんちん専用だった。
結局、おにーさんが手に取ったのはオナホが1つといつも使うコンドームとローション、それとおちんちんをいじめる時に使ったゼリーだった。おにーさんが高いと言っていたゼリーは、本当に高かった。
「おにーさん、ありがと」
「そんなどっかに突っ込みたかったなら早く言えば買ってやったのに」
「それじゃなくて!」
「?」
「その、ゼリー。本当に高いんだね。そんなの使ってくれてありがと」
「当たり前だろ」
もっともっと手頃な値段のものはたくさんあるのに、迷いなくそれを手に取って買ってくれる。それを当たり前にしてくれる。この人がすることはちょっとアブノーマルだけど、こうしてちらほら見える思いやりがすごく嬉しい。
感極まって抱きつきとする俺を当然避けたおにーさんはスタスタと手だけ見えるレジに歩いて行った。
* * *
BLoveでも同じものを公開しています。
そちらでは出来心で番外編みたいなものを載せてきたんですが、ごちゃごちゃになって読みづらいかと思いましたのでプライベッターに移動していきます。
本編には全く差し支えのないものですので、もし興味がある方はこちらからどうぞ⸜( ´ ꒳ ` )⸝
@ci_3510
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