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別々にお会計をして、それぞれなんとなく包装もして貰った。中身が分かっていてもそれだけでちょっと雰囲気が出るような気がしたからだ。 いつ渡そうとそわそわする俺を車に押し込んだおにーさんはまた車を走らせる。 「今度はどこ行くの?」 「家に帰るんだよ。穂積がいるぞ」 「ミホちゃん?あ、もしかして俺の髪?」 「それもある」 「も?」 「まあ行けばわかる」 「またそれ!?」 説明するのが面倒なんだろうなぁと思いながら大人しく車に揺られることにした俺。どうやらミホちゃんも一緒に鍋をするようで、俺はしいたけとくずきり入れてって頼んでくれた?と好物の確認をしたのだった。 家に帰るとおにーさんが言っていたようにミホちゃんが来ていてお鍋の用意をしてくれていた。 「わあいお鍋!しいたけ!くずきり!いっぱい!」 「ぶっ、なに、ほんとにしいたけとくずきりが好きなの?」 「うん!鍋の主役だよね!」 「どう見ても脇役だろ」 「そうかなあ」 まあ主役か脇役かはどっちだっていい。俺がものすごく大好きで鍋には欠かせないってことが大事だ。おにーさんに伝えててくれてありがとおと言うとヨシヨシと頭を撫でてくれた。 お鍋の用意をしてくれるミホちゃんを見ながら、今日仕事じゃなかったの?と聞いたら休みと言われた。美容師さんは土日も当然仕事だけど、月に2〜3日は土日の休みを取るようなローテーションらしい。 「阿川くんにあった?」 「まあな。会う気は無かったんだけど」 「?」 「あいつストーカーだろ、気づいたら家バレてんだけど」 あ、それはストーカーだね。 「ミホちゃん大丈夫?なんかされてない?」 「それは平気」 まあそうだね、体格的に阿川くんの方がしっかりしてるけどミホちゃんの方が強いだろう。空手の有段者でキックボクシングもやっててってなると多少自分より体格が良いくらいの相手に負けないと思う。 「あいつマジで何したいの?」 「何されてるの?」 「マジでなんもされねえよ。ただ見られてるだけ。仕方ねえから蹴ってやるとやっと話しかけてくる」 仕方ないから蹴るってそれで良いの?っていうかミホちゃんそう言いつつ相手してあげるんだからやっぱり優しいなあ。 「誠くん、なんか変な入れ知恵してないよな?」 「した覚えないけど……あ!でもミホちゃんにぶつかってる阿川くんの方が好きだとは言ったかなあ」 「はあ。それでか」 「うん?」 「見られてるだけってどんだけ不気味か知ってるか?なんもして来ねえ、バレバレなのに影から見てるってなんだよあいつ!」 「恋する乙女だよ。好きな人に話しかけたくても話しかける勇気がなくて見てるの」 「あれで乙女はねえわ」 ああもう!と苛立たしげに自分の頭を掻くミホちゃん。だけど今の阿川くんを何?って聞かれたら本当に恋する乙女だと思う。不器用もここまで来ると怖いなっていうのが俺の感想だけど、まあミホちゃんがそれでも相手をしてあげてるなら良いのかなあと思う俺に、マジでストレス溜まるってミホちゃんの声が聞こえて阿川くんどんまいと心の中でなーむーと唱えた。 「マジでない。俺は遊ぶのやめてストレス発散が減ってマジでイライラしてんのにヘラヘラヘラヘラ来やがって。俺が何もしないのをいいことに……くっそ」 あれ、やばい。なんかこれ相当イライラしてる?と感じて俺はおにーさんのそばに避難する。ミホちゃんは俺にエッチな意地悪はしない(はずだ)けど、蹴るくらいなら普通にされるから痛い。 話をしているうちにお鍋の用意ができたらしく、机には鍋に取り皿が並んでくる。 ミホちゃんが作ってくれたお鍋はおにーさんが作るそれによく似てるけど少し違う。例えば切り方の癖だったりちょっとした薬味だったり、そう言うのが少し違う。だけどやっぱり美味しかった。おにーさんが作るものに近い味がして、きっとこれが夏目家の味なんだろうなぁと思った。

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