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「はっ!!!ここってもしかして江ノ島?」 「ああ」 「ふぁぁあ!江ノ島!あれ?江ノ電乗ったっけ?」 「車で来ただろ」 「ああ、そっか」 そしてここで残念なお知らせがある。 江ノ島は来てみたかったけど、どう楽しむ場所なんだろう。そもそもどういうところなんだ? まさかおにーさんに言えるはずもなくどぉしようと目を回していると、ふっと笑い声が聞こえておにーさんは俺の手を引いた。 「ちょっと変わったおみくじあるから引かねえ?」 「どう変わってるの?」 「楽しみにしとけ。誠のことだからとりあえず行ってみたいってだけで何あるとか全然分かってねえだろ」 「………うん」 「神社に行って、岩屋を見るか?水族館もあ「水族館!?」 「食いつき早えよ」 だって大好きだもん。 「明日はシーパラ行くけど、それでも行く?」 「シーパラ!?」 「そう、帰りにな」 本当に!?なにこれ、おにーさんの休養のはずが俺の行きたいところを巡る旅になってるじゃん。 「………明日シーパラ行くなら、今日は穂高さんの行きたいところ行く」 「俺は温泉入れたらそれでいい」 「そうなの?」 「ああ、ゆっくりのんびり温泉に浸からせてくれたらそれでいい」 「………いじわる」 俺がおにーさんの裸見てムラムラすること分かっててこう言うんだもんなぁ。約半年前の旅行でもそういうことをする気がなかったおにーさんにねだったのは俺だった。今回の旅行ではその反省を活かしてちゃんとゴム持って行こうね!と言った俺にため息が降りかかったことは言うまでもなかった。 おにーさんと並んで歩いているとすぐに仲見世通りに入って色々な食べ物に惹かれる。まっすぐ歩かない俺を引っ張るわけでもなく、舌打ちするわけでもなく買い食いは3個までだと言うだけで俺の散策に付き合ってくれるらしい。 「おまんじゅうにお団子、おせんべい、浜焼きにモナカ……ビール!?」 「昼から飲むなよ」 「家に帰ってから飲む」 「それならいい」 目移りしかしない通りだった。 悩んだ末にたこせんべいとおまんじゅう、ビールを買った。 「それ4つじゃね?」 「おせんべい、おまんじゅう、ビール、3つだよ?」 「まんじゅうが2個あるだろ」 「女夫まんじゅうだからセットでひとつだよ」 「バラ売りしてんのに?」 「夫婦茶碗と一緒!」 そんな屁理屈を押し付けると仕方ねえなと言っておまんじゅうの1つを取っていった。ああ!とおまんじゅうを追う俺は齧られていくおまんじゅうを見て、仕方なく手に残ったおまんじゅうに噛り付いた。まだあったかいおまんじゅうはほんのり甘くて美味しかった。 そうして通りをどんどん進み、おみくじ!と喜ぶ俺に先に詣れと言うおにーさん。このやり取り2度目だなと思いながらきちんとおにーさんに倣ってお詣りをした。 「っておみくじは!?」 「まだ先」 「?」 そんなやり取りをもう一度して、やっと引けたおみくじは真っ白だった。 「あれ、これはお先真っ白ってこと?」 「それを言うならお先真っ暗だろ」 同じように真っ白の紙を持ったおにーさんはどこかに歩いて行って、その紙を水に浸す。なるほど、こういうおみくじだったのかと俺も真似て水に浸した。 「吉だぁ!」 「何だ一緒か」 「穂高さんのも見せてー」 おみくじを眺める手を少し下に下ろしてくれて、おにーさんの引いたおみくじを眺める。概ねいいことが書いているけど、ひとつ。恋愛 恋敵に注意とあって、これだけ少し気になった。と言ってもおにーさんのものだから俺に関係あるようなないような……? 俺のはどうだろう?と自分のおみくじの恋愛を見ると、心のままに行動せよと書かれていた。 「おみくじって、いつも意味深だね」 「そういうもんだ」 「俺、心のままに行動するのがいいんだって」 「それで?」 「だから手、繋いでもい?」 「良くねえよ」 「いーじゃん!」 おにーさんの手を追いかけてちょろちょろ動き回り、人に当たりそうになったところでおにーさんは危ねえと言って引き寄せてくれる。その隙におにーさんのお手手をゲットした。 『スキ』 と手のひらに書いておにーさんを見上げる。 俺を見下ろすその人の澄ました顔がふわっと笑って、俺もだよと優しく答えてくれた。やばい、神聖な神社でいちゃついてしまったと少しだけ反省をした。

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