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155.
江ノ島の神社を十分に楽しみ、お昼ご飯を食べる。
実はもう目をつけていたものがある。
「生しらす食べたい!」
「いいけど、食ったことねえの?」
「生はない。母さんなんてお刺身買ってきて火を通してこんがり焼いたこともあるんだよ?それとかお刺身買ったの忘れてて夏の廊下に数時間放置とか」
「焼くのはともかく放置はやばいな」
「家の中やしいけるで!って食べたら俺以外みんなお腹崩してた」
つまりいけてなかったわけだ。
それ以来うちでお刺身は滅多に見かけなくなった。
「誠んちってどっちか標準語じゃないとこ出身?」
「うん、母さんは大阪だよ。今でも家の中で1人バリバリ関西弁喋ってる」
「へえ、行ったことあんの?」
「ないよぉ」
「?」
「俺が生まれた時にはにいちゃん達ってもう中学生とか小学生だから予定合わなくて。向こうのおばあちゃんとおじいちゃんが来てくれてたよ」
おにーさんは大阪行ったことある?と聞けばあるよと答えてくれる。たまに出張があるようで、その時に行ったことがあるだけだと言っていた。休みが取れたら大阪旅行行く?と聞けば休み取れんの?と痛い所を突かれた。おにーさんが休みを取れても俺がなかなか合わせることができないのだ。
「それに大阪行くなら京都行きたい」
「穂高さんって神社とか好きだもんね」
「あんまゆっくり観光に行ったことはねえんだよな」
「任せて!休みとる!」
「次は秋だな」
そう言って次の旅行の話もする。
おにーさんは京都に行くなら行きたいところがたくさんあるみたいで絞れないと言っていた。
「大丈夫だ」
「ふえ?なにが?」
「京都には内陸型の水族館あるぞ」
「そうなの!?」
「ああ」
「やったぁあ!」
「こら、立ち上がんな」
はいとすぐに椅子に座って本当に?と確認する。ほんとと言ってスマホを渡してくれて、そこには京都水族館のホームページが写っていた。ウキウキ眺めているうちにご飯がやってきて、おにーさんにスマホを返した。
生しらす丼。生のしらすと釜揚げしらす、あといくらも乗っている。
「透けてる」
「行儀悪ぃ」
「はぁい」
ぴろーんと生のしらすをひとつ摘み上げてかざしているとすかさず注意され、パクッと口の中に放り込む。釜揚げしらすとまた違った食感でこれはこれで美味しかった。
また車を走らせて、水族館じゃなく温泉地に向かう。泊まる温泉地だって有名な観光地だからと欲張った。そこでも買い食いをして、おにーさんにほんとよく食うなと呆れられてしまった。
そして、ついた旅館にびっくりする。
思っていたよりもずっと趣があってそう………
「和って感じ!」
「感想がバカっぽい」
なんて言われたって俺が感じるのは和の一言に尽きる。
2人で泊まるには少し広い室内にはやっぱり机と座椅子がある。荷物を置いて部屋の扉を開けまくる。布団セットに浴衣、タオルやアメニティグッズ、湯飲みにお茶の葉っぱ、茶菓子。
旅館とはこういうものなんだなと2回目にして学ぶ。
「浴衣の色違うよ」
「サイズで色分けしてんじゃね?」
「なるほど。帯も?」
「何本あんの?」
「4本!えんじ色2本と深緑2本」
浴衣の色はネイビーとグレーで、ネイビーは2枚ある。そんなことを言えば、おにーさんは受付で俺見てサイズ大きいの出したんだろうなと言った。旅館はそんな見えないサービスもしてくれるんだなぁと改めてサービスの違いを感じた。
ご飯は18時半だからゆっくりしてていいぞと言ったおにーさんは浴衣を手にとって部屋風呂に消えていく。それならばと俺は旅館の探検に出かけた。
暗く見えるのはきっとこの建物のせいだろう。内装がシックな感じで、それに合わせて暖かみのある照明をつけている。きっとこの内観に眩い光は似合わないからこれも全部計算だななんてことを思ったりした。
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