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「それならさ、話して俺に甘やかされる方がよくね?」 「甘やかすじゃなくて怒るの間違いじゃないの?」 「いいや?甘やかすけど?」 なんで?今は怒ってんじゃん。 そう視線で訴えると、今はなと言った。 「甘やかして甘やかして、俺から離れられなくすんの」 「………」 「怒られるのと甘やかされんの、どっちが良い?」 「………甘やかされる」 「いい子」 そう言ったおにーさんは俺に見えるように手を伸ばす。その手を取るとぐっと引っ張られて、床からおにーさんの膝の上に移動した。 お説教は終わりってことかな。抱きしめてもいいのか悩む俺をそのまま抱き締めてくれて、俺もおにーさんの背に手を回した。 そして、なにも言わなくてごめんなさいと謝って、ポツポツと最近あったことを話し始めたのだった。 「ったく、何拗らせたらこんな手紙書けんだよ」 「こんな詩的なの思い浮かぶのはすごいと思うけどね」 「お前も懲りろ」 「へ?なにに?」 「素直なところは好きだけど、そういう奴相手になんも考えずにすごいだのかっこいいだの言うからめんどくさいことなってんだろ」 「…………」 その通りだ。ああ、確かにその通りだ。 だけどなぁ………とチラッとおにーさんを見るとばっちり目が合ってなに?と聞かれる。 「穂高さんは素直な方が好きじゃん」 「まあな。けど俺に素直ならそれでいいよ。他のやつはどうでもいい」 「穂高さんも地味にひどい」 「普通だろ。んな誰にでも振り撒けるほど優しさ持ち合わせてねえよ」 「優しいよ?」 「お前には下心。職場じゃその方が楽だから。それ以上の理由なんてない」 言い切るあたり清々しい。 でもせめて俺には真心と言って欲しかった。下心なんて、まあ持ってくれていいんだけど優しさは真心がいいよ。 って話が逸れそうになって来た。 今はおにーさんの優しさの話をしてるわけじゃなくて… 「拗らせたやつに素直な言葉は効きすぎだな」 「………少し気をつける」 「そうしとけ」 本当に怒ることもなく、ちょっとだけ気をつけることを教えてくれて、素直に頷いた俺をいい子と言って撫でる。甘やかすと言った言葉に嘘はないようで、怒ると言うよりは諭すと言った方がいいのかもしれない。 おにーさんの独占欲の強さは知ってるけど、それって俺が考えてた普通とは少し違う。 俺が思ってたのは怒って嫉妬心をぶつけちゃうみたいなそんな感じ。 けどおにーさんは気に食わないと言いながら甘やかして、俺のことを囲うように退路を奪う。ここの方が居心地がいいだろうと、俺が離れたくなくなるように怒らず甘やかして俺をどんどんダメにして行く。 ぱっと見は怒られるより良いんだけど、やってることはこっちの方がタチ悪い。自分の独占欲も満たして、俺の依存心を増やして、どんどん自分に堕としていくやり方は性格の悪いおにーさんらしい。 「穂高さんの性格の歪みを見た」 「そのくらい知ってんだろ」 「思っていたよりも根っこから歪みまくっているらしい」 「そうだな」 自覚はあるんだね。この方がタチが悪いってこともきっと分かってるんだろうなぁ。それでも離れられないのは、俺はすでに逃げれないくらい、この人に堕ちていたからなのかもしれない。 そう思ってもやっぱり大好きだから、ぎゅっと抱きしめてその首筋にちゅっと吸い付いて甘えた。

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