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昼近くに起きたと言うのにすぐにソファに沈んだ俺に文句も言わず、大丈夫か?と優しく俺に聞いてくれるのはおにーさん。俺の頭側に座って目線を合わせて聞いてくれるその表情はすごく優しい。 「ん、へーき。寝不足なだけ」 「昼食ってから寝れるなら寝てもいいぞ」 「うーん、考えとく。お昼ご飯なぁに?」 「オムライスか焼きそば。どっちがいい?」 「んー………オムそば!」 そう答えた俺にくすっと笑っていいとこ取り?と言うからコクリと頷く。卵は好きだし、今日はなんとなくソースな気分。ちょっとわがままな答えだったのにそれでもOKらしくお昼ご飯はオムそばに決まった。 それからしばらくおにーさんの膝を借りてソファでゴロゴロして、ぐぅうっと俺のお腹が空腹を訴え始めたところでおにーさんが料理のために立ち上がった。 後を追うようにのそのそダイニングに移動して、漂ってくるいい匂いにさらにお腹の虫が鳴り始めて、おにーさんが先にこれでも食べてろと朝ご飯の残りであろうサラダとスープが出て来た。 「わぁい!ありがとぉ」 「残り物だから組み合わせ酷いけど我慢しろよ」 「いいよぉ。そんなの母さんで慣れてる」 そもそも俺は気にしない。 兄達がこの組み合わせで食べんの!?って母さんに抗議してたから少し変わった組み合わせだと思ったくらいで、俺としては何も気にならなかった。 「大丈夫だよ。炊き込みご飯のおかずにチマキ出て来たこともあったし」 「は?」 「あとはおかずが豆腐と厚揚げと白和えなんて日もあったなぁ」 「………」 「大丈夫、俺はそれでも何も気にしないよ」 「お前の味覚というかセンスというかが大丈夫じゃねえよ」 えへへと笑って誤魔化しても誤魔化せていない。 ちなみに今日の俺のお昼ご飯になるのはお豆の乗ったサラダにトマト系のスープ。それにオムそばの組み合わせでも俺は全く気にならない。どれも美味しいと知ってるから、うわぁ豪華!って喜ぶだけだ。 おにーさんに俺の実家の食卓を話すことは初めてじゃないけど、やっぱり今回も信じらんねえって顔してるからうちの食卓は少し変わっているのかも知れない。 そうして懐かしい食卓を思い返しながらサラダとスープを掻き込み、少しした頃にほかほかと湯気を立てるオムそばが俺の前にやって来た。 明らかに俺のオムそばの方が中身が詰まっている。見るからにパンパンなそれを躊躇うことなく食べた。 「んんっ!ソース日和!」 「なんだそりゃ」 「ソースが食べたい日ってない?」 「あんまねえよ」 「美味しかったぁ、お腹いっぱい」 「朝食べてねえしちゃんと食っとけ」 「これで完全に生き返った!」 寝不足は慣れっこだ(慣れたくないけど)。 それに俺がゲームしながら、あるいはボーッとしてるうちに寝たとしてもおにーさんは起こしたりしないから休みの日にはたっぷり寝れる。 おにーさんの中のルールで昼ご飯は食べることと、昼寝からは遅くても5時に起きることはなんとなく分かってるけど、それ以外は何も言われない。それどころかちゃんと転がってていい子と言ってもらえるんだから、謎だ。 そうしてぐうたら過ごして褒められる休みを2日間も過ごし、睡眠欲も性欲もがっつり満たした。 今週も頑張るぞ!と少し意気込んで会社に乗り込み、思わぬ人の姿に入る部屋を間違えたかと開いた扉を確認した。うん、やっぱり間違えてない。 「社長ぉ、おはようございます」 「おはよう伊藤くん。技術部はみんな早いんだなぁ」 「………どうかされたんですか?」 「直接伝えようと思ってね。来週の初め頃に申請してた機器が入るよ」 「えっ!?やったぁあ!ほんとですか?」 「本当だよ。また結果が出たら教えて欲しいのと、説明のために取引先に行ってもらっても大丈夫かな」 「はい!大丈夫です!」 うわぁいと事務室で小躍りを披露したくなるけど、狭いし物が多いため我慢。ああうずうずする! 「そんなの田中さんの勉強会やってる場合じゃ無いよぉおお!」 「それの話もあって今日は来てるから大丈夫だよ」 「へ?」 「野田くんからも製造部からも色々と聞いていてね。今伊藤くんが勉強会をしてくれていることも聞いてるよ」 何もしてなさそうに見えて(失礼)ちゃんと社長業をしつつ新入社員の話も聞いて実は忙しい人、それが社長だ。

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