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213.
眺めるのをやめてテーブルの上に置き、2人でいただきますと手を合わせる。
平日に一緒にご飯食べるなんて久しぶりだ。もちろん、そう思ったのは俺だけではなかった。
「誠って今週暇だったの?」
「うーん、いつも通りだったよ」
「それにしちゃ早くねえ?」
「今日早く帰って来たくて、ついでに明日も休みたくて昨日までに仕事詰め込んだだけだよ」
「後で体重計な」
「…………」
「痩せてりゃ何もしねえからな」
「………意地悪」
「今乗せてもいいんだぞ」
それにはブンブンと首を振って拒否を示す。
多分、多分痩せてる。おにーさんが居ない家が無理すぎて仕事ばっかしてたから食べるのが疎かに……。やっぱり俺には寝ずに食べるなんて無理だった。食べずに寝ることは出来るんだけどな。
ご飯の後で、ってことはご飯を食べた分上乗せしても見逃してくれるってことだからと俺はたらふく食べてやると決意してご飯に手を伸ばした。
「穂高さんこれ何、骨付き唐揚げ」
「チューリップ」
「よく分かんないけどこいつがね、穂高さんがお風呂入ってる時に食べてってすっごい誘惑して来たんだよ。食べてって!」
「笑かすなよ」
「らってぇ」
「食いながら話すな」
お行儀にうるさいおにーさんに注意されて、俺はもぐもぐと口の中のものを味わう。
おにーさんの唐揚げも絶品だけどこれもまた絶品。
カラッと上がって、それでいてしっとりジューシー。味がしっかり染みてて最高っ。
「美味しいーっ!」
「だろ?お前帰ってるっていうし、作るには今日はもう勘弁だし買ってきた」
「うんうん、たまには楽していいんだよ。卵かけご飯でも良いんだよ」
たまに話をしながらパクパクと目の前のものを摘んでいく。美味しくて手が止まらない俺を楽しそうに見ながらおにーさんも食べていた。
半分こどころか俺の方が明らかによく食べた気がする。
美味しかったんだもん、仕方ない。
ふっと息を吐いてパンパンになったお腹を摩る。うん、こんだけ食べたらきっと50キロはある。うん大丈夫!
おにーさんが簡単に片付けをしてからちょいちょいと呼ばれて、洗面所で体重計に乗せられた。
「あんだけ食って50.4か」
「50あるもんねっ、やったあっ!」
「俺が居なくてもちゃんと食えよ」
「ふふっ」
「んなことしても誤魔化されねえよ」
だろうね。けど抱き付いた俺を邪魔だとも言わず俺を抱き上げてリビングに戻る。そうして近くなったおにーさんの匂いに、体温にすごく落ち着く。
俺は毎日家に帰って来てたはずなのに、やっと帰って来れたと思った。
ソファにゆったりと座ったおにーさんにもたれる様に寝転がって話に花を咲かせる。今日の俺の興味は仕事中のおにーさんだ。
本人曰く優しく穏やかで口調も丁寧とのことだけど全く想像が出来ない。おにーさんは基本的に優しくて穏やかだけど性格の悪さがその全てをうやむやにしてる。
口が悪くないおにーさんなんて俺には全く想像ができない。
「仕事中もそのままでいたら………」
「?」
「あっ、やっぱりダメ!」
仕事仕様の優しくて穏やかで丁寧な口調の夏目さんを辞めたら良いのにと思ったけど、それはそれでダメだ。
基本的には優しいけど、口が悪くてさでぃすてぃっくで性格がかなり歪んでて独占欲まで歪みまくってることを知っても好きだという人が現れる方が大問題だ。
「1人で忙しそうだな」
「俺は穂高さんみたいに上手く囲えないもん。だから人がびっくりするほど口が悪くて性格が歪んでるのは隠してたら良い」
「?」
「本性を知ってドン引きされたら良いもん」
「ぶっ、なに、お前ほんと可愛いな」
可愛げのあることを言ったつもりはない。
ドン引きされろって言ったのに、おにーさんは楽しそうに、そして嬉しそうに笑っていた。
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