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215.
その日はそれからも不思議が続いた。
とにかくおにーさんが優しい。
いつも優しいんだけど、なんか違う。自然な優しさじゃなくて、甘やかそうとしてる優しさって感じがして、それでさえ俺には心地良くて困る。
ごろんとおにーさんの膝をいつものように借りていると頭を撫でてくれて、もぞもぞと見上げるとその涼しげな顔を少し緩ませて笑ってくれる。
それに照れてまたもぞもぞと顔の向きを変えて、悶絶した。
「どうした?」
「穂高さんこそどぉしたの」
「はあ?」
「下心は何!?覚悟するから早めに言って!」
「何、なんかされたい?」
「なんかする気でしょ??」
「いや、特には」
「!?!?」
そんなバカな!
下心なし!?
いやいやおかしいと頭を振るとくすぐったいと髪を抑えるように撫でられた。
………うん、おかしい。
「誠っていいなって思っただけだ」
「うん?」
「もっと俺しか見えなくなればいいのにな」
なにを考えてるのか読めないけど、おにーさんは大きな手で俺の目を覆って物理的に見えなくした。
そうされてもおにーさんにされてるならと特に抵抗もしない俺はどうしたの?と声だけで尋ねる。
「誰にでも媚びるような奴よりお前の方がいいなと思っただけ」
「香水の人?」
「そう。臭いし誰にでもああだし。こっちにも選ぶ権利はあるんだよ」
「………ほほぉ、なかなかな美人さんだったと見た」
「あー、まあ遊ぶならアレでもいいけどな」
複雑。
だけどおにーさんがどんな顔してるか今の俺は見えない。
「お前いるのに遊ばねえよ」
「穂高さんは独占欲も歪みまくりだもんね」
それは否定もせずに、それどころかそうだよと言って目隠ししてた手を離してくれる。
「お前くらいだよ」
「?」
「俺に何されても平気な顔してそばにいる奴」
「………痛いことも意地悪もするけど、それ以上に優しいじゃん」
「優しいだけを求められるんだよ。無理だっつーの、下心あっての優しさだ」
「言い切るあたり清々しい」
「だからお前ってすごいと思うよ」
「なにが?」
「好きになって付き合うと優しさだけ求められて、性癖合わせて付き合うと優しくすると嫌がられて。意味わかんねえ」
「ふふっ、ミホちゃんほどじゃないけど穂高さんも拗らせてるね」
おにーさんも色々と悩んだんだろうなぁ。
優しさは下心って言っても本当に優しいけどなあ。意地悪したいから甘やかしてることもあると思うけど、そうじゃ無い時だって普通に優しい。
おにーさんは好きな人にだから優しくしたいし意地悪も痛いこともしたい。どっちかだけじゃ足りなくて、どっちもやって満たされるのがおにーさんの愛情と独占欲。
そして、俺はそれを向けられてとても満たされる。
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