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「やだ出掛けたくない。家に居よぉよ」 「用事しかしねえからすぐ済む」 「そんなに大事な用事?やだぁ、家がいいよぉ」 「はあ」 朝ご飯の片付けを終えたおにーさんに着替えろと言われたけど、嫌だとごねてみる。そもそもおにーさんは俺がゲームしてたり待ってると言えばいつも1人で買い物に行くのになんで今日に限って? ああ違う。今日は1人で行ってきてってことじゃなくて、家でいちゃいちゃ甘ったるく過ごしたいのだ。 そんな俺にため息をついたおにーさんはしゃあねえなと諦め……… 「お前の誕生日ケーキ選びに行くんだけど?」 「へっ!?」 「好きなの作ってもらえるはずだけど?」 「っ!!!着替えてくるっ!」 さっきまでのごねっぷりはどこに行ったのか。 俺はスッと立ち上がって着替えるために寝室に向かった。 40秒で支度はできなかったけど、最速で着替えて廊下に出る。適当に服を着た俺と違って溢れる清潔感……。 「俺、おにーさんと並ぶとさらに幼くならない?気のせい?」 「気にしたことねえよ」 「んー、ならいっか。どぉやったら俺にも溢れる大人の魅力が身につくだろ」 「んなこと言ってる間はお子様なんじゃねえの?」 ガーンと落ち込んだフリをしてみるけど、フリだとバレてるからおにーさんはろくに相手もしてくれない。 だけど軽く俺を振り返って、早く来いよと言って待っててくれている。 こういうところが堪んない。 「どこのケーキ屋さん?」 「こっから2駅先の店。お前の好きなん選んでいいよ。最初から作るにしても2時間もあればできるし」 「その日の気分で選べるって良いね」 「だろ?」 「穂高さんなんの気分?」 「誠の誕生日だから好きなん選べ」 うーん、悩む。 久しぶり食べるし王道のイチゴショートかなぁ。 いや、チョコケーキも。 いやいや、チーズケーキも長いこと食べてないぞ。 頭の中は回転寿司のようにケーキが流れていて、おにーさんの話をあんまり聞けてない。 そのまま車に乗せられて辿り着いたケーキ屋さんはカフェも併設されたおしゃれなところ。 「こんなおしゃれなところ来るならもう少しまともなカッコして来たのに!」 「お前そんな服しか持ってないだろ」 「楽が1番!」 「薄汚れてるわけじゃねえし誰も気にしねえよ」 言い方! そりゃね、俺の服はおにーさんが洗濯してくれているからいつも綺麗だ。 そのままお店に入ると開店して間なしのはずなのにたくさんのケーキが並んでいる。ショーケースの端っこにはホールケーキもあるけど……2つしかない。まさかの2択!? 「誠」 「はぁい」 「これホールケーキの写真。今日作れないものってありますか?」 「今日でしたら転写プリントのケーキと苺のタルト以外でしたら2時間ほどお待ちいただけるならお好きなものをご用意出来ます」 「ありがとうございます。だってさ」 「あ、うん」 敬語使ってるおにーさんなんて初めて見た。 今の俺は目の前のケーキの写真よりも敬語使ったおにーさんへの違和感が凄くて鳥肌立ちそう。 うわぁあ、素を知ってる分気持ち悪さが尋常じゃない。無理無理、こんな時だけでいい。 なにこれ会社でいつもこんななの? 慣れたら気持ち悪いとかじゃなくておかしくって吹き出しそう。 「誠?」 「あ、ごめん。穂高さんの敬語って違和感しかない」 「敬語くらい使うわ」 見たことないからなぁ。 違和感を感じつつもケーキを眺める。 今日はチョコより生クリームな気分。ぺらぺらとページを捲って俺が決めたのはイチゴの乗ったショートケーキ。なんとイチゴに顔が書いてあってその顔がなんとも言えない顔してて気に入った。 おにーさんはこれ?って感じではあるけど、俺の誕生日ケーキだからか口を挟まれることはなかった。

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