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ケーキを注文して、そのあとどうするんだろうと思っていたらおにーさんもあまり考えていなかったらしい。 「穂高さんっ!」 「なんだ?」 「せっかくなんだしケーキ食べてこぉよ」 「ケーキ買ったのに?」 「うんっ!ここでチョコケーキを食べたら完璧だよね」 「………まあいいか」 わぁい! おにーさんはどれがいいの?と俺に聞いてくれて、俺が食べたいものを指差すとショーケースの向こう側にいる店員さんに伝えてくれた。俺の好みなんてバレてるのか、こんなところで俺が飲めるのが数少ないからなのか伝えなくてもホットのカフェオレを頼んでくれていてほっこりする。 嬉しくてじっとおにーさんを見ていると目が合って、違った?と聞かれる。合ってるという意味で首を横に振ると、おにーさんは安心したように頬を緩めた。 誕生日って、すごい。 おにーさんは優しいけど、それが特別優しくて特別甘くなる。誕生日が年に数回あってもいいかも知れないなんてバカなことを思うほどに嬉しい。 イートインのカフェもオシャレだった。 白とナチュラルな木目を基調とした店内。テーブルにはクロスが敷かれてるけどシミなんかは見当たらない。インテリアも派手じゃない程度に自然な飾りがあるだけなのに全体的に統一感があって静かで落ち着く空間だった。 「穂高さんがコーヒー豆買う店とは違った感じでいい所だね」 「だろ?」 「よく来るの?」 「穂波が好きなんだよ」 「確かに女の子は好きそう」 明るい店内、だけど大学生のカップルが行くには少し敷居が高くて。ちょっと年上の彼氏なんかとお昼に大人デートする時にお茶したくなるようなお店。 俺はエスコートするにしてもこんなお店はまだこっぱずかしい。人を連れて行くとなると背伸びをするより身の丈に合った店がいいなんて思ったりした。 美味しいケーキとカフェオレを堪能して、なんだか順番がおかしな気がしたけど近くにある飲食店でほんのり早いお昼ご飯を食べた。その店を選んだのは俺で、おにーさんはかなり渋っていたけど俺の誕生日だよ?とねだるとしぶしぶ付いてきてくれた。 「別に隣の店でも良かったんだぞ」 「焼肉も良いけど、今日は卵に満たされたい」 「お前って安上がりっつーかなんつーか」 「いーの」 テーブルに座って親子丼を頼む俺と、うどんを頼んだおにーさん。俺がここが良いと言ったのは親子丼とうどんのお店。チェーン店だから別の店舗なら言ったのがあるけどここの親子丼は好き。 だけど今日は朝からすでに2つも卵を食べているから避けたいおにーさんにずるい手を使った。 「卵ほんと好きだな」 「ここの親子丼食べたことある?」 「ある」 「オレンジ色した黄色い卵が半熟で乗ってるんだよ?すっごく美味しい。あ、あの卵も親子丼にしてみる?」 「どう食べてもいいけど、今日はなし」 「うん!茹で卵は絶対だからね」 「はいはい」 残り7個の高級卵。 ゆで卵で3つほど消化して、残り4つはおにーさんに親子丼作ってもらってもいいかも知れない。親子丼も当然美味しく作ってくれるおにーさんだから、あの卵と組み合わせたら絶対にやばい。 俺の誕生日ケーキを買うのと、お昼ご飯を済ませて帰って来てからはよく見る休日の光景だった。 せかせかと家事をするおにーさんと相変わらず死にながらゲームをする俺。たまにコントローラーを投げ出しておにーさんに構って貰って、元気になってゲームの世界に死にに行く。 特別なプレゼントとか無くても、俺の誕生日に俺が好きなものをたくさん詰め込んでくれることがすごく嬉しい。 朝から高級卵かけご飯、ケーキに親子丼。 夜ご飯はなんだろうと思って聞いてみるとハンバーグと言われて、夜ご飯まで俺の好きなもので固められていた。

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