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おにーさんはしばらく考え込んで、ポツリと言った。 「重いとか思わねえの?」 「思うよ?けど知ってるもん。俺は穂高さんにこうしてどんどん囲われて行くの好きだよ。愛されてるなーって思う」 「ほんとお前には敵わねえな」 おにーさんが重いことくらい知ってるよ。 最初から他に尻尾振るなとは言われてたし、ちょっと田中さんみたいなのが居たら余計甘やかして俺の依存度を上げてくるし。けどそんなの含めて好きなのだ。 欠点がない人なんて居ないから、欠点も愛せる人と一緒に居たい。 俺はそんな人に、幸せなことに出会えたのだ。 「大好き」 「はいはい」 おにーさんは甘える俺の頭を撫でて、深く息を吐き出す。 「いいよ挨拶。俺んちはいつでも」 「ふああ!心の準備が!俺のガラスのハート砕けない?」 「お前の心臓はんな繊細じゃねえよ」 「おっとバレてる!」 「お前んちは?」 「まず俺から母さんに話してみるよ。どうせまた数ヶ月もしたら俺出張あると思うし」 「分かった。俺こそ砕けそうだな」 「穂高さんでも緊張する?」 「俺をなんだと思ってんだよ」 イメージ無いんだもん。 いつもすました顔してるから緊張とかするって想像できない。けど、いつもより少し早い鼓動から、おにーさんもそれなりに緊張することがあるんだと分かった。 「お前んちってどんななの?」 「どんなって?」 「ほら、お兄さんたちは結婚してるんだろ?」 「あ、そう言うこと?えっとね」 1番上の兄はいきなり奥さんを連れて来たけど、連れて来てくれた時には奥さんのお腹が目立ってたっけ。母さんはお腹の子が女の子だと聞いて飛ぶように喜んでいた。 2人目の兄は出会って3ヶ月で結婚した。この時母さんはインスピレーションって大事やで!と笑ってた。 3人目の兄は気づいたら結婚してた。どうやら付き合って数年は経っていたようだけど、家も出てたし式もしないしとこっそり籍を入れていた。ちなみにそれを知った母さんはサプライズやん!素敵やん!と喜んでいた。 4人目の兄は中学の頃から付き合っていた子と人生の半分を付き合って結婚した。母さんは付き合いの長いその子を気に入っていたから喜んでたっけ。 まあつまり母さんは大体いつも笑い飛ばして喜ぶ。 父さんは青い顔して白目剥きそうになってた時もあったけど、母さんがバシッと背中を叩いてあんたそんなちっちゃい考えしてたらこのグローバルな社会を生きられへんで!と意味の分からない怒り方をされてそれもそうだなとヨロヨロしながらも母さんについて行ってた。 「いいお母さんだな」 「繊細さは皆無だけど、人を傷つけるようなことはしない人だよ。豪快ってことにしておいてあげて」 「そういう人ほど、本当は繊細なんだろうな」 「………そぉかなあ」 「お前だってそんなバカっぽいのに人の気持ちとか読むの上手いだろ」 「褒められてるはずなのに腑に落ちない」 気にするなと頭を撫でられて渋々話を変える。 「穂高さんちは?」 「うちはある程度俺らの意見とか考え優先だな。穂積のこともあったし出来るだけ寄り添う感じ。常識を教えてはくれるけど強要はしねえよ」 「さぞ繊細なお母さまと見た」 うちの母さんじゃそれはありえないな。 責めることも非難もしないと思うけど、そんな風にそっと寄り添うのは苦手だと思う。 けど、それが俺の思い違いだったと知るのはもう少し後の話になる。

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