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俺の誕生日からしばらく過ぎたある日曜日。 俺は1人で出掛けていた。 今では慣れた都会の人の多さ。 有名な待ち合わせ場所だから人は多いけど、有名な分迷ったとしても聞けばすぐにわかると思ってここにした。 「うわっ、人多いね」 「いつもこんなだよ。伊藤先輩どこだろ」 なんて声が聞こえて、人の隙間から俺の待ち人の姿が見えた。 「彩綾、牧くんこっちー」 「あれ?今誠の声した?」 「どっちだろ?ああもうなんでこんな場所でっ」 いやいや、君たち耳付いてる?なんで俺に頭向けて俺を探してんの。チョンチョンと肩を叩けば2人して居た!と叫ぶもんだからちょっと耳が痛かった。 「2人とも声おっきい」 「すみません。それにしても人多いですね」 「休みの日の方が当然多いよ」 「なんか誠は慣れてるね」 「1年も住んでると少しは慣れるよ」 そう言って一緒に歩き始める。 誕生日を過ぎて少しした頃、牧くんからメッセージが来た。無事に引っ越せたからご飯行きませんか?と誘われて、迷うことなく良いよと返信した。ところがまあ色々とあって、彩綾が来てるタイミングになってしまったから3人で良いかとなった。 「誠のオススメのお店ってなにかある?」 「俺の外食は基本喫茶店」 「コーヒー飲めないのに?」 「フレンチトーストが絶品なお店と、ケーキが可愛くて美味しいお店がお気に入り」 「近い?」 「うん、そんなに離れてないし。それに」 こうして彩綾と牧くんとご飯行って来ます!とおにーさんに報告したら車で行って良いよと言われて車を借りて来た。 「伊藤先輩、俺まだ死にたく無いです」 「ゴールド!俺ゴールド免許!」 「慎吾くん大丈夫だよ。こう見えて誠の運転はそれなりだから」 慎吾くん、かあ。 牧くんデレてるし。 ただでさえ暑い季節なのに……。けどまあ良いや。俺は彩綾のことを幸せには出来ないけど、彩綾を傷つけてしまったことは後悔してる。 それを乗り越えて彩綾が笑い合ってる相手は、俺がすごく信用している後輩なんだから、ちょっと暑いくらい我慢しよう。 俺に意見を聞いてきたのに、彩綾が行ってみたいと言ったお店に向かいながら、後ろで話す2人が仲良さそうで安心した。 「牧くんの部屋ってどんな感じ?」 「ごく普通のワンルームですよ」 「狭い?広い?」 「8畳くらいだったと思います」 「ほほぉ」 「ユニットバスなのが不便です」 「あれやだよね。分かる」 ユニットバス本当にやだった。 今は独立洗面台があって快適に歯磨きも洗顔も出来て本当に幸せ。 「彩綾泊まるときが大変だね」 「それなの!誠もっと言ってやってくんない?」 「なにを?」 「彩綾っ!?」 「私昨日どこに泊まったと思う?」 「?牧くんの部屋じゃ無いの?」 「ホテルだよ!ビジネスホテル!1人で!!!」 「ぶほっ、は?え?」 「彩綾、もういいだろっ!?」 「良くないよ!」 一人暮らししてるのになんで泊めないんだろ。 牧くんに限って後ろ暗いことがあるなんてことはないだろうし、うーん。 少し考えながらミラーで2人を見ると牧くんの顔が赤い。 牧くんって2年の頃から彩綾が好きらしいし、やっぱり高嶺の花的な感じで手は出せないとか? 2人がやったやってないなんて話はあんまり聞きたく無いけど、相談くらいは甘んじて受けるんだけどな。 「まあその辺は2人で話し合えばいいと思うよ」 「誠!」 「伊藤先輩っ!」 「けど、たまにのことなんだからさ。部屋は別でも同じところに泊まってあげたら?」 「うんうん!」 「………善処します」 何があるのかわかんないけど、完全に牧くん側の問題みたいだなあ。 そりゃ理想は同じ部屋だけど、それが無理なら別の部屋でも取ってあげた方が彩綾は喜ぶと思う。 彩綾にとってはすごく嫌であろう遠距離で、たまに会いに来たのにホテルに1人で泊まってと言われたら憤るのも無理はない。

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