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229.
俺の誕生日からしばらく過ぎたある日曜日。
俺は1人で出掛けていた。
今では慣れた都会の人の多さ。
有名な待ち合わせ場所だから人は多いけど、有名な分迷ったとしても聞けばすぐにわかると思ってここにした。
「うわっ、人多いね」
「いつもこんなだよ。伊藤先輩どこだろ」
なんて声が聞こえて、人の隙間から俺の待ち人の姿が見えた。
「彩綾、牧くんこっちー」
「あれ?今誠の声した?」
「どっちだろ?ああもうなんでこんな場所でっ」
いやいや、君たち耳付いてる?なんで俺に頭向けて俺を探してんの。チョンチョンと肩を叩けば2人して居た!と叫ぶもんだからちょっと耳が痛かった。
「2人とも声おっきい」
「すみません。それにしても人多いですね」
「休みの日の方が当然多いよ」
「なんか誠は慣れてるね」
「1年も住んでると少しは慣れるよ」
そう言って一緒に歩き始める。
誕生日を過ぎて少しした頃、牧くんからメッセージが来た。無事に引っ越せたからご飯行きませんか?と誘われて、迷うことなく良いよと返信した。ところがまあ色々とあって、彩綾が来てるタイミングになってしまったから3人で良いかとなった。
「誠のオススメのお店ってなにかある?」
「俺の外食は基本喫茶店」
「コーヒー飲めないのに?」
「フレンチトーストが絶品なお店と、ケーキが可愛くて美味しいお店がお気に入り」
「近い?」
「うん、そんなに離れてないし。それに」
こうして彩綾と牧くんとご飯行って来ます!とおにーさんに報告したら車で行って良いよと言われて車を借りて来た。
「伊藤先輩、俺まだ死にたく無いです」
「ゴールド!俺ゴールド免許!」
「慎吾くん大丈夫だよ。こう見えて誠の運転はそれなりだから」
慎吾くん、かあ。
牧くんデレてるし。
ただでさえ暑い季節なのに……。けどまあ良いや。俺は彩綾のことを幸せには出来ないけど、彩綾を傷つけてしまったことは後悔してる。
それを乗り越えて彩綾が笑い合ってる相手は、俺がすごく信用している後輩なんだから、ちょっと暑いくらい我慢しよう。
俺に意見を聞いてきたのに、彩綾が行ってみたいと言ったお店に向かいながら、後ろで話す2人が仲良さそうで安心した。
「牧くんの部屋ってどんな感じ?」
「ごく普通のワンルームですよ」
「狭い?広い?」
「8畳くらいだったと思います」
「ほほぉ」
「ユニットバスなのが不便です」
「あれやだよね。分かる」
ユニットバス本当にやだった。
今は独立洗面台があって快適に歯磨きも洗顔も出来て本当に幸せ。
「彩綾泊まるときが大変だね」
「それなの!誠もっと言ってやってくんない?」
「なにを?」
「彩綾っ!?」
「私昨日どこに泊まったと思う?」
「?牧くんの部屋じゃ無いの?」
「ホテルだよ!ビジネスホテル!1人で!!!」
「ぶほっ、は?え?」
「彩綾、もういいだろっ!?」
「良くないよ!」
一人暮らししてるのになんで泊めないんだろ。
牧くんに限って後ろ暗いことがあるなんてことはないだろうし、うーん。
少し考えながらミラーで2人を見ると牧くんの顔が赤い。
牧くんって2年の頃から彩綾が好きらしいし、やっぱり高嶺の花的な感じで手は出せないとか?
2人がやったやってないなんて話はあんまり聞きたく無いけど、相談くらいは甘んじて受けるんだけどな。
「まあその辺は2人で話し合えばいいと思うよ」
「誠!」
「伊藤先輩っ!」
「けど、たまにのことなんだからさ。部屋は別でも同じところに泊まってあげたら?」
「うんうん!」
「………善処します」
何があるのかわかんないけど、完全に牧くん側の問題みたいだなあ。
そりゃ理想は同じ部屋だけど、それが無理なら別の部屋でも取ってあげた方が彩綾は喜ぶと思う。
彩綾にとってはすごく嫌であろう遠距離で、たまに会いに来たのにホテルに1人で泊まってと言われたら憤るのも無理はない。
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