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オシャレなお店を出てから、今度は彩綾の買い物に付き合わされる。かなり久しぶりだけど、これはもう慣れたもの。しっかりと熟考してからものを買う彩綾だから長いから待たされることも多い。なんなら地元にないから来てみたかったの!と彩綾が吸い込まれたお店はとてもじゃないけど俺と牧くんは入れない。 その店の前にはきっと彼女待ちであろう男性が何人も俺や牧くんと同じように突っ立っている。入れる人もいるかもしれないけど、俺は女性用ランジェリーショップにはとてもじゃないけど入れない。 「伊藤先輩も入らないんですか」 「さすがにこういうお店はね。彩綾が買いたい時はこうして店の前で待ってる」 「聞きたいことあるなら聞いて良いよ。彩綾いると聞きにくい事?」 「………伊藤先輩って彩綾としてましたよね」 「そんなこと聞きたいの?」 「あ、違います。一応の確認であってあんまり聞きたくないです」 「してたよ」 「はぁぁあ」 「………牧くん童貞?」 「はっきり言わないで貰えます!?」 ちょっと、声おっきい。耳痛い。 まあ言われたくないのかも知れない。牧くんだって今年23歳の男の子だし。いや、今の俺の周りには27歳の童貞も居るから別に気にすることもないと思うというか。 「彼女居なかったの?」 「彩綾を好きになってからは居ないですし、その前は高校の時だし……早いかなと」 「だから彩綾だけホテル泊まりだったわけだ」 「そうです。同じ家とか無理ですよ。俺だって男だし」 「あはは、そぉだね」 そりゃ好きな相手が自分の家に居て、付き合ってるとなれば手も出したくなる。ん?いや出せばよくない? 「彩綾で良かったって」 「何がです?」 「女の子ってそういうことしてる時って痛くても我慢したり、気分じゃなくても我慢したりしてることってきっと多いんだよ」 「?」 「けど彩綾はそれをしない」 「うん?」 「彩綾は自分を大事にするからそういう我慢はしない」 「断られても傷つくんですけど」 「そんなキツく言わないはずだよ」 俺は彩綾と付き合って、それまで自分がしてきた性行為はいかに自分本位だったかを知った。俺を傷つけないように配慮しながらも、嫌なことも痛いこともきちんと伝えてくれる方がよっぽど良い。 まあそう気付いたと言っても俺はそんなに上手くもない。 それはおにーさんと出会って気付いたこと。 おにーさんのエッチは堪んない。 痛いこともされるけど、それ以上の快感がある。 あんな風に頭ん中ぐずぐずになるようなエッチは、たぶん俺にはできない。 「彩綾はちょっと抜けてるからさ」 「はい?」 「こっち来て牧くんとパジャマパーティー気分だったと思うよ」 「男的にはそんな気分じゃなくないですか」 「そぉだね、俺は牧くんに賛成」 本能に忠実な男としては、やっぱり彼女が泊まりに来てくれたりするとそりゃあそういう邪な考えも湧いてくる。 まあだからって、それから守る(?)ためにホテルに押し込むのはどうかと思うんだけど。 牧くんの気持ちも分かるような、彩綾の気持ちも分かるような。 「牧くんがそれだけいい子なんだよ」 「?」 「彩綾ってそういうところちゃんと警戒する方だけど、牧くんはこれまでそういうの一切見せなかったわけじゃん。だから安心してるんだよ」 「それはそれでちょっと嫌なんですけど」 「けど警戒されて気軽に来てくれないのも嫌じゃない?」 「………」 「だから、ホテルに泊まってもらうにしてもそういう気持ちを言ってあげたほうが彩綾は安心すると思う」 モヤモヤしてすぐに会える距離じゃない。 それならきっと話した方が牧くんにとっても彩綾にとっても良い。 彩綾との別れを経て俺が学んだのは、2人のことは2人で相談して決めるべきだということ。 嘘をついてなくても、誤解は解かなきゃ誤解されたまま。 どれほど相手を想ったとしても、自分の中に閉じ込めてたら誰にも分かんない。 そうして砕けたものを後悔しても、やり直しは出来ないのだ。

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