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「ははっ、お前らしいな」 おにーさんを幸せにするなんて言えない俺になぜか嬉しそうな笑いをこぼしているおにーさん。顔は見えないけど、呆れた口調ではなくて少しホッとするけど、ご両親の声は全然聞こえなくてやらかした!?と不安がぐるぐると回る。 「ほんとこんな奴だよ」 「穂高はそれでいいの?」 「ああ。幸せにするって言われるような柄じゃねえし、こいつが家に転がってないのはイライラする」 「それは重症ね」 お母様同意見です。 顔はあげていいのか分かんないからチラッとしか見れないけど、全くもって同じ意見です。 家に居てもおにーさんに甘えてるかソファや床に転がってるだけなのに、そんなのが居なくてイライラするなんて本当に重症だと思う。 俺のこと好き過ぎじゃないかな。 そんなこと言ったら伝わってない?って意地悪と甘さが酷いことになって俺が酔いそうだからもう言わないけど。 「穂高」 「ん?なに父さん」 「誠くんはなにをしてるんだ?さっき仕事を聞いたら社畜って返ってきたんだが」 「ぶっ、お前会話も出来ねえの?」 「ふえ?だって俺社畜だよ」 「仕事聞かれたんだからどこに勤めてるか言えば良いんだよ」 「Zコーポレーション本社技術部の伊藤誠です。ってあれ!?俺ちゃんと名乗ったの今が初めてじゃない!?気のせい?」 「気のせいじゃねえよ」 ふぁぁあ! おかしい!挨拶ってまずは名前をだな……って違うんだよ! お父様もお母様もなぜか俺のこと誠くんなんて呼ぶからついうっかりしてたんだよおっ。 うっかり先走って玄関で挨拶したらおにーさんに場所が違うって止まられたんだよおっ。 「誠くんの話は穂波からも聞くのよ?バカそうなのに頭良くてびっくりって」 「穂波ちゃん!?」 「実際見てみると穂波の勉強を教えられる子なのか不安しかないが」 「そんなぁ」 バカっぽいとは言われ慣れてきたけど、今日くらいは賢そうに見えなくて良いからバカには見えたくなかったんだけどな。 「言動はバカだけど頭は良いし、人としてはバカじゃないよ」 「んんっと、フォローしてる?」 「してる」 「ならいっかぁ」 そんな俺とおにーさんの会話を聞いて、穂高が好き放題言ってると驚くご両親を見ていると、このおにーさんしか知らない俺からしたら一体どんな分厚い猫を被っていたんだろう?とちょっと興味が湧く。 つんつんとおにーさんの服を引っ張って、小さな声で聞いてみる。 「そんなに猫被った付き合いばっかりしてたの?」 「あー、まあ友達も会社もそんなもんだ。その方が楽っつーか揉めない」 「恋愛は?」 「友達社会で優しい俺見て好きになるならそんな俺しか要らないだろ」 「もったいないね」 「?」 「甘いものばっかり食べてたらたまには刺激物が欲しくなると思うけどなあ」 その例え相変わらず分かんねえと言われたけど、俺はこんなにも良い例えはないと思っている。 もちろん優しくて甘ったるいおにーさんだけでも大好きだ。だけど意地悪をした後で甘やかされるのはもっともっと好きだ。 やっぱりいろんな味を楽しめる方が楽しいんじゃないかなぁと思う。 「あんまんだと思って食べたらピザまんだった感じ!」 「余計分かんねえよ」 「うーん……」 「もう良いからその例え。どんだけ出てきても理解できる気がしない」 「ええっ、すごくわかりやすくない?」 「父さんと母さん見てみろよ。意味分かんないって顔してるぞ」 「………あんまんだと思ったのにピザまんでも美味しいですよね?」 「ふふっ、そうね」 お母様は笑って答えてくれたけど、お父様はおにーさんに良く似た(似てるのはおにーさんか)呆れた顔で俺を見ていた。 ってこれじゃダメじゃん!!!

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