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呆れられてるのは分かってるんだけど、ほんとよく似てるなぁ。 ミホちゃんも表情が変わるとおにーさんによく似てるなって思うからこの家は全体的にお父さんの遺伝子が強いらしい。 「?」 「穂高さんに良く似てま……穂高さんはお父さんにそっくりなんですね」 「昔から良く言われるよ」 「だけど、穂高さんの方がすました顔してます」 「「?」」 「お父さんの方がより柔らかい感じがします。ん?あれ?ってことはミホちゃんはお父さん似?」 「お前、緊張すると頭回らねえんだな」 「俺も今日初めて知った!」 どうやら俺が緊張してるのはおにーさんには伝わったらしい。 こんなに緊張してると感じるのは初めてだった。 これまでしてきた告白、 初めて彼女の親に彼氏として紹介された時、 就職での面接、 卒業研究の発表会、 初めて営業さんと取引先に行った時、 自分より何年も先輩の営業さんの前で試作の勉強会を行った時。 そのどんな時も緊張するとは思ったけど、頭はきちんと働いていた。 思ったことが口から出てしまってハッと口を抑えるなんてことはしなかった。 胃が雑巾絞りされるという感覚は、ちょっと分からないけど。 「うーん、でもミホちゃんはお母さん似かな?」 「ミホちゃんっていうのは穂積のこと?」 「あ、はいそうです!すみません、最初からそう呼んでいて。穂積くんのことです」 「どうしてミホなんてあだ名になったのかしら」 うーんと考えるそぶりを見せるご両親と、俺を見て緩く首を振るおにーさんを見て話しちゃいけないことだと察する。 ミホちゃんはそういう遊びをしていたことを両親には話していない(冷静に考えたらそれが普通だと思う)。 もちろん、それを俺が今ここで言うのは簡単だけどそんなの誰にとっても良くないことだっていうのは頭が働かない俺でも分かった。 「呼び方は置いといてやって。ぶっちゃけ穂積のことに関しては俺も誠に感謝してるし」 「何かあったの?」 「いや、別に」 おにーさん、白々しいにも程があるよ? まあ何かあったって言えばあったんだろうけど、おにーさんはそれを言うつもりはないらしい。 きっと優しいミホちゃんのことだ。 両親が苦悶の末に自分のことを受け入れてくれたことは分かっていた分、そうして爆発した性癖からそんな風に遊んでいたなんて言えなかったんだろう。 「まあいいわ。穂積は穂高と違ってたまに帰ってくるんだけど、最近はいい顔で笑うようになったわ」 「………」 「穂高もたまには帰ってきなさい。車で」 「俺のこと足に使う気だろ」 「仕方ないじゃない。お父さんの運転が怖いんだもの」 「だからってな。しかも全部俺に買わせるだろ」 「あれは穂高が就職して何か買ってくれるって言ったからじゃない」 「あんなことになるとは思ってねえよ」 そう言えば似たようなことをお正月も言ってたなあ。 おにーさんは初任給できちんと親孝行したんだ。 感心する俺を他所に、おにーさんは嫌そうな顔して初任給全部飛んでったけどなと俺に教えてくれた。 「穂高さんってずっと今みたいにお給料良かったの?」 「いいや?働いて最初の2年はお前よりちょっといいくらいだったよ」 一体何を買わされたらそんな凄い金額になったんだろう。 そんな疑問を解決してくれるのはやっぱりおにーさんだった。 「エアコンが古くなってきたから買い替えろって。このリビングのだぞ?いくらしたと思ってんだよ」 「そうそう、最近私たちの寝室のエアコンの調子も悪いのよね」 「父さんがいるだろ」 「やあね、もうすぐ定年で恩給に変わるお父さんよりまだまだこれから働く穂高の方が頼りがいがあるわ」 「………」 「これでもしっかり働いてきたけど、まだ30のお前にピークの年収越されるとは思わなかったよ」 「仕事柄な……」 「そんなわけだからよろしく」 ダメだ、笑っちゃダメだと俯いて必死に堪える。 なにこれ、おにーさんどんだけ当てにされてるの。 ご両親がこんな感じだから穂波ちゃんもミホちゃんも未だにお年玉ねだりにくるんじゃん。 おにーさんは無理な時は無理って言うはずだから、ため息ついて諦めてるならまあいいやと思えることなんだろうけど……。 親孝行にもたくさんの種類があるってことにしておこう。 そう自分に言い聞かせていると軽く頭に手が乗って、顔を上げるとやっぱりおにーさんだった。 「笑ってんのはバレてんだよ」 「………へへっ?」 「ったく」 「穂高さんは家族に甘いんだね」 「まあ父さんより稼いでるのは事実だし?」 そう言うとお父さんからガーンとショックを受けた様子だったけど、そう言えばなんの仕事してるんだろう。 恩給云々言うくらいだから公務員、だよねきっと。

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