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「家のこともしてくれてお金も出さんでいいから?」 「ううん。そりゃして貰ってるのも経済的な負担が全くないのも認めるけど、そうじゃなくても一緒にいたい」 母さんが黙ったから、俺も何も言わずに母さんを見る。 「誠、男の人が好きなん?」 「男の人が好きなわけではないよ。ずっと一緒に居たいって思った人が男の人だっただけ」 「………」 また無言の母さんを俺は黙ってみる。 反対されても仕方ないし、出てけと言われても仕方ない。 これまでもいろんなことがあっただろうけど、俺の家では男の人を紹介してきた兄はいなかったはずだから母さんにとっても初めての出来事だろう。 「あんたがちゃんと甘えれてる人がその人なん?」 「うんそう」 「誠はその人とおったら幸せなん?」 「うん」 「………ならええわ」 「へっ!?」 「それならええよ。いつでも連れておいで。あ、けど1個だけ!」 「なぁに?」 「お母さんは反対しやんし、誠が言うって言うならお兄ちゃん達に言うのも好きにしたらええけど孫たちにはまだ早いと思うねん」 「そんなの分かってるよ」 1番上の姪っ子が中2。 そんな多感な時期にそれなりに仲良くしてたはずの人がマイノリティなことをするのはどんな影響があるか分かんないし。それに兄たちに言うかどうかもまだ考えてない。 「それよりどんな人なん?お母さん年上でよぉ稼いでてあんたのこと甘やかすのがうまいってことしか知らんねん」 「そんな人だよ」 「仕事は何してはるん?」 そう言っておにーさんの話になって、仕事を言えば母さんだけじゃなく父さんまで目を剥いた。めっちゃ稼ぐやん!と母さんは驚いてるし、父さんは俺のピーク時より稼いでるんじゃ……?と顔を青くした(なんだか同じセリフを聞いたことがある気がした)。 「そんないい仕事してて誠でええんかな」 「それは俺も思う」 「あんたそんなのほほんしててええん?婚活は戦場やで」 「大丈夫だよ。穂高さんはモテるけどモテないって言うか、モテても全てを台無しにする何かがあるって言うか」 「あんた何言ってんの?」 母さんから残念な子を見る視線が突き刺さるけど、あんまり気にせずに笑ってごまかしてみる。 おにーさんは基本的に優しくて穏やか。いい仕事をして人並み以上に稼いでる。いつもすましたような顔に見えるけど意外と表情豊かだし、背も人並み以上。 だけど、性格の歪みっぷりも人並み以上だ。 俺に対して優しいのは、その方が楽だからじゃなくてその方が囲いやすいから。そうしていた方が俺は居心地がいいし、おにーさんにどんどん溺れていく。そうして抜け出せなくなっている俺を見て笑っているのがおにーさんだ。 そして、性癖ももちろん歪んでいる。お付き合いをしてからもエッチしたら噛まれるし、相変わらず俺のおちんちんをいじめるのは好きそうだ。 「誠って昔っから身の丈に合わん子ぉばっか連れてくるな」 「?」 「系統はちゃうけど誠にはもったいないくらい美人やったり可愛かったりしてたやん。いっつも申し訳なくってしゃあなかったわ」 「………」 「どぉせすぐ別れるやろな思ってたのに案外続くし。ほんまびっくりやで」 俺、知らないだけで母さんに嫌われてたのかな?なんて思うくらい言われ放題だ。 だけど何にしても、母さんがいいよと言った以上口を出さないのがうちの父さんだからまたいつかおにーさんと一緒にここに来よう。 久しぶりに母さんと父さんとゆっくり話して、みんなして夜更かしした。部屋に戻ってからもおにーさんとメッセージのやり取りをしてたから、それが終わる頃にはかなり遅い時間になっていた。 寝る前に水でも飲みたいと下に降りると、なぜかまだリビングから明かりが漏れていて俺は消し忘れ?と思いながら近付いた。 水が飲みたくなってよかった。 我慢せず寝ようなんてしなくてよかった。 盗み聞きなんて良くないけど、俺は今降りてきた自分を褒めてあげたい。

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