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母さんの愛情に泣き、おにーさんに安心して甘やかされて泣き、夜になるといじめられて泣いた休みが終わり、今週末には待ちに待った4連休!
あと1日残っている振替の休みはさらに翌週の土曜日に取ることにしている。月末の方がおにーさんが忙しいから、俺も合わせて連休にしてみた。
おにーさんは忙しくても休みな土曜日。
俺はなぜかそれを振替を使わなければ休めない謎仕様だけど、今更なので何も言わないでおく。
4連休のために多少やることが増えると思っていたのに、思っていた何倍もやることが降って湧いた。なんでも、
「伊藤くん4連休!?だったらこれ先に頼んどいていい?」
と、俺の予定を見た営業さん達により俺いじめが行われている。実際俺がやってるものだから俺に振られるのは分かるんだけど、ちょっと皆さん集めすぎやしませんかって話だ。
「はあ、休むために残業するなんて意味分かんない」
「あんまり現実叩きつけないでください」
「うん?」
「今事務所から戻ってきたんですけど、社員旅行の話で事務員が盛り上がってました」
「ふぁっ!?もぉそんな時期!?」
「俺たちはそのために残業するんですよね、きっと」
「そぉだよ、去年はクマ張り付けた疲れた顔で夢の国に行ったよ」
「今年は温泉と観光らしいですよ」
「へええ」
そんなのどうでもいいから行かなくていいという選択肢を作って欲しい(切実)。
入社して約半年、ようやく田中さんは社内の人とそれなりに良好な関係を築けている。本人も自覚のあるコミュ障で未だに長い雑談は苦手なようではあるけど、仕事に差し支えないレベルにはなった。
たまに営業さんにこっぴどく叱られてるのも見るけど、それはそれだ。
こうして事務員さんから話を聞いてこれるほどには成長していてそれは少し嬉しい。
「温泉かぁ。温泉ねえ。温泉っ!?」
「???」
「無理だ!無理だよ!無理なんだよ!」
待って、温泉?
ええっ、無理っ!
おにーさんも居ない旅行で、不特定多数の前で裸になる(この言い方はなんか卑猥で好きじゃないけど)なんておにーさんが許してくれるはずがない。
社員旅行は仕方ないにしても温泉に入ることは絶対にダメだと言われる。というか言われなくても入れない。
成人した男なのにまさかのツルツルだからとてもじゃないけどおにーさんの前以外で裸になんてなれない。
「温泉嫌いなんですか?」
「あぁー、うん。うんそおいうことでいいや」
「潔癖症なんですね」
うん?と意味が分からず固まる俺に、いろんな人が入ったところに入れないんですよね?と確認するように聞かれたから曖昧に頷いておいた。
残念ながらそんなこと考えたこともない。
わぁい温泉!楽しみ!と何も考えずに入りに行く方だ。問題なのは温泉じゃなくて俺の体だ。あと独占欲が強くて歪んでる俺の恋人。
はあぁと深いため息を吐きながら社内メールを確認する。
朝イチに見た時は来てなかったけど、今見ると確かに社員旅行に関するメールが届いていた。
やっぱり全員参加の社員旅行。日程は10月最後の土曜日と11月最初の日曜の1泊2日。
有名な温泉地で、今回は旅館に泊まるらしい。
紅葉やちょっとした観光施設を楽しみ、夜は旅館らしい宴会場でパーティらしい。去年はみんなで集まって飲み食いしただけだったけど、今年は景品つきのビンゴやらゲーム大会をするらしく、その景品例がいくつか書かれていた。
技術部全員分を印刷して、それぞれの机に置いておく。ここの部署のメンバーにとって、これは社員旅行のお知らせじゃなくて強制残業通知に近いから喜ぶ人は居ないだろうけど。
今年こそ熱出ないかな、と非現実的なことを考えながら仕事に取り掛かり今日も今日とても日を跨ぐギリギリでの退社になった。
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