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席は決められていなかったから、来た順やなんとなくよく話す人が固まって座っている。そうなると6人で来た俺たちは固まって座るとこになり、俺はみんなにお酒は飲めないからねと宣言した。 すると伊藤くんが激弱なのは知ってると全員から返事が返ってきてほっとする。ここにからみ酒がいないことを祈ろう。どうせここで大人しくしてても向こうからからみ酒がやってくるかもしれないし、俺はお酒に飲まれないぞと硬い決意をした。 「伊藤くん」 「なぁに?」 「やばい、浴衣すーすーするっ、あぐらかけない」 「パンツ履いてないの?」 「トランクス派なんだよ、見えそうで怖い」 「誰もわざわざ阿川くんの股間に注目しないと思うけど」 「そういう問題じゃないんだよ!」 ツルツル初心者の阿川くんはすーすーすると言って、女子か!と突っ込みたくなるほどに浴衣を気にして座る。 なるほど、もし俺が今日トランクスだったらあんな気分だったかもしれない。トランクスって太腿のところもゆったりしてて涼しくて好きだけど、その分あぐらとかしちゃうとおちんちんのチラ見えは普通に起きる。 それでお毛毛があるかまでは分かんなくても、ツルツルな人は気になって仕方ないのかもしれない。 そんなとっても下らない話をしていると、咳払いと共に社長の挨拶が始まった。と言っても堅苦しさはなく、みんな気楽に飲んでくれ、いつも本当にご苦労様といった具合なことを少し長く話していたに過ぎない。 せっかくの旅館の料理なのに、周りがうるさすぎて全然集中して食べれない。 少しずつ出てくるのは仕方ないとして、それでも綺麗に飾り付けされた美味しそうな料理なのにあっちからもこっちからも飲まない?とビールにワイン、日本酒に焼酎を抱えた人に絡まれてしまい味わうどころではなかった。 そうして騒がしい食事の最後、デザートが運ばれてくる頃になると賞品獲得のためのゲームが始まった。 チラッと載ってた物以外にも景品はあるけど、キッチンを暖めてくれそうなものはダイソンかファンヒーターくらいだ。どっちでも良いけど、俺的にはダイソン。ファンヒーターだと灯油を買いに行く仕事が増えちゃう(おにーさんに)。 「伊藤くん何狙い?」 「ダイソン。あれ以外だとスイッチ欲しい」 「ダイソンってかなり早く上がらなきゃ無理だろ」 「俺ビンゴ強いよ」 「ビンゴに強い弱いってある?」 うーん、そう言われると悩む。 ビンゴって運だけど、俺はビンゴは案外強い。 ダイソンのように大きな景品なんかは写真だけが並んでるけど、ダイソンには3って番号が振られてる。あれは3番に上がれば良いのかな。 「夢の国のペアチケット欲しい」 「本当に景品豪華だね」 「社長就任10年、会社創立100年って言ってただろ」 言ってたっけ? 俺は目の前のご馳走を食べることと、絡み酒を躱すことに必死だったから社長の話はあんまり聞いてなかった。 へえ、だからこんなに豪華なのか。 1って番号のなんて離島リゾートペア宿泊券とかだよ。 あんなの当たっても俺に行く暇ないから1と2は無し。2はどこか分かんないけどあれも宿泊券って書いてるから俺の仕事が増える。 そうして同期たちと景品を眺めて居ると、事務の人がビンゴの紙を配り始めてくれた。 「伊藤くん強いって言ってたし交換して」 「良いよぉ」 そう言われて、同期の竹本くんと交換する。 他の同期は結構ぐでんぐでんだけど、阿川くんと竹本くんは無事に生きてる。2人ともなかなかビンゴに真剣だ。 「竹本くんは何狙い?」 「1か2。あれを彼女の分まで出すのはキツい」 「なるほど」 そういう選び方もいいなぁと思う。 普段なら手が出ないけど、こんな時にゲットしていけるなんて棚ぼた気分。 そんな話をしながら始まったビンゴゲーム。 同期みんなとワイワイ言いながらそれなりに楽しみ、ビンゴゲームが進む。 「やっば、めっちゃ開く」 「竹本くんの全然開かない」 俺のはそんなに空いてない。というよりまだ4つしか穴を開けてないけど、すでにリーチひとつ。 「いや、まって?なんでリーチ?」 「知らないよ。だから言ったじゃん、ビンゴ強いって」 「この場合俺が強かったってことじゃない?」 「交換も含めて俺の運」 「なんだよそれ」 そう言ってケラケラ笑ってる竹本くんのビンゴは開いてるもののリーチは無い。俺はこれを含めて強さだと思う。 そうしてリーチになってから3つ目、俺はあっさりと揃えた。 「ビンゴ!」 手を上げてそう叫ぶ。 他に声は聞こえないから、今上がったのは俺だけだし俺の前に上がった人は居ない。………えっ!?あれ??? 「1位上がりは技術部の伊藤くん!1等はリゾート「やだ!ダイゾンがいい!」 「え?」 「すみません、俺ダイソンが欲しいです。ダイソンとった人交換してください!」 勝手にマイクを借りて大きく宣言する。 どうかダイソンを取った人が交換してくれますようにと祈りながら、続きを見守ることにした。

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