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2-17.
三が日をずらしたというのにたくさんの人で賑わう神社。
俺はまだ詣ってもないのに参道に並ぶ出店ばかり見てしまう。それでも今買うなんてことはもうしない。ちゃんとお詣りしてからだと言われている。
「2つまでな」
「うん?」
「昼外で食うだろ?」
「出店を食べ歩いてもいいよ」
「俺は座って食いたい」
「はぁい。あったかいもの食べたいね。今夜は鍋だよ」
「なんで食うだけのお前が決めんだよ」
「美味しい、2人で食べてこその鍋、あったまる!」
お鍋は1人じゃ寂しいから週末しか出来ないし、今日食べておきたい。
「まあいいか。昼は?」
「えーん、それもあったまるのがいい」
「うどん?そば?ラーメン?」
「全部麺類だね」
「俺の気分が麺類」
「なるほど」
俺はどれも好きだからなんだっていい。
お昼ご飯を決めかねている間に着いてしまって、2人で頭を下げて鳥居をくぐる。
それから手を洗って、お詣りをする。
礼をして、手を合わせて、祈る。
今年こそどうか仕事が落ち着きますように
本当はもっと祈りたいことはあるけど、それはいくらなんでも10円玉に乗せるには重過ぎるお願いだからこれにしておく。
もう一度手を合わせて、礼をして正面から避けた俺は穂高さんを待つ。しばらくすると来てくれた穂高さんは、なに願った?と聞いてくる。
「穂高さんは?」
「秘密」
「………秘密ってなんかえっちいね」
「お前の頭ん中が不安になるわ」
呆れた声で言いながら、少し乱暴に俺の頭をかき撫でる。
穂高さんが撫でたからなのにぐちゃぐちゃになった髪を見て笑われて、俺はもおっ!と憤慨しながらおみくじに向かった。
笑ってついてきた穂高さんとおみくじを引いて、引いた番号の紙を貰う。
「やったあ大吉!」
恋愛 この人より他になし
うんうん、よく分かってるじゃん!さすがだよおみくじ。
転居 差支えなし
よし、引っ越しするとしても大丈夫そう。
これは間違いなく大吉だなあ。
ん、あれ。ちょっと待って、なにこれ。
今は雪の下で春を待つ芽のようですがやがて大輪を咲かせます?
ちょっと待って、よく分かんない。
しかも耐え忍び我慢すればうんちゃらって、なにに?
うーん、おみくじって大吉でもやっぱり考えさせられる。
「なに難しい顔してんだ?」
「考えさせられるなぁと思って。俺我慢は苦手だよ」
「そうだな」
「穂高さんは?」
ぺらっと結果を渡してくれて、読む。
「ちょっと待って!神様!なんで俺の誠意を疑うの!!!」
「うるさい」
「おかしいよ!」
「だからうるさい」
「だって!なにこれ!相手に誠意なし!?」
待って待って!
なんということ!信じられない。
くっそぉ。
そう思いつつ他も読む。
「縁談は、心の思うままにって穂高さんはなんだかんだ自分が思ったように持って行くじゃんか」
「引っ越しやめる?急ぐなって書いてるよ?」
「ねえこれほんとに大吉!?」
「おみくじ相手にうるさい」
「ううーん、引き直す?」
「アホか」
いや、だって。
なに吉を引いてもいいんだよ。問題なのは俺の誠意を疑ってるこのおみくじだ!これだけは許せない。
「誰が疑おうが俺は疑わねえよ」
「穂高さんっ!」
そうして抱きつこうとした俺を当然避けた穂高さんは何食わぬ顔で話を続ける。
「疑わしきは閉じ込めろって言うだろ」
「疑わしきは罰せずだからね!」
「流石にお前でも知ってんのか」
「バカにしすぎ!」
そんなやりとりに穂高さんは楽しそうに笑う。
穂高さんが気にしないなら、まあいっか。
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