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2-21.
付箋のもの以外も全部見てみるけど、そもそも田舎の古い戸建てに住んでた俺が都会に出て社畜小……じゃなくて小さな俺の城を持ってみたけどたった2ヶ月半でこの家に転がり込んで。
この家でさえ実家よりもよっぽど綺麗でオシャレ〜って感じなのにその上をいきそうなのが分譲。
ただ、オシャレさと共に気になるのがその販売価格だ。
「これやっぱり俺も払おうよ?ローンだけでいいからさ」
「いらねえよ。そんな生活困ってそうに見える?」
「………見えない」
そう、全く見えない。
それが大問題。
「人って知らない方が幸せなことってあるんだよ」
「?」
「穂高さんのお給料を運悪く知っちゃったらもう働けない」
仕事的に収入が多いことで有名ではあるけど、俺にはこんな稼ぐ兄は居なかった。
「まあ無理せず返せばいいさ」
「………」
「ローンも今の家賃と変わらないくらいで組む気だから問題ねえよ」
「俺のお給料って、何のためにあるのかな」
「誠がゲーム買って好きに使うためだろ。お前ゲーム買ってやるとか言っても遠慮するだろ」
「もぉこれ以上はいいよ、働いてないならまだしも俺ちゃんと働いてるもん」
穂高さんは俺が働いてることを誰よりも知っている。
だけどあまりの忙しさに泣いてることがよくあることも、1番知っている。
だからこの人は辞めたいなら辞めたらいいという。
そんな風に言ってくれるから、俺はまだ働ける。
働かなきゃダメだろって言われると、いつまで?ずっと?このまま?と明かりのない暗いところを歩くみたいですごく重たいんだけど、辞めたらいいと言ってくれるから気持ちが楽になる。
穂高さんは俺がそういう風に思うからそう言ってるんじゃなくて、俺が働かなくなって自分に依存すればいいと思って言ってることだとしても、この言葉は俺を明るくしてくれる。
「そんなわけだし、近いうち見に行くか?」
「うん!ねえ、これ間取り?」
「そう。マンションだから基本は同じ。畳コーナーを小上がりにするとか、全部フローリングにするとかは出来るけど部屋をデカくするとかは無理だぞ」
流石にそのくらい分かってるよ。
この付箋のだと1LDKか2LDK。リビングに3畳ほどの小さな畳コーナーがあって、それはルームとしてカウントされてない。3LDKになってくるとリビング近くに和室があって、それが1室とカウントされている。
俺にはよく分かんないけど、見た感じお風呂とトイレはもちろん別々。洗面台は独立してるし、ランドリースペースも十分に確保されてそう。
さすが分譲。
「穂高さんカップボードって何?」
「備え付けの食器棚みたいなもん」
「ほほぉ。パントリーは?」
「食糧庫」
なるほど。
食器棚はともかくパントリーとかいるの?と思うけど穂高さんは少し嬉しそう。料理する身としては便利なのかな。
「なんか楽しみになってくるね」
「だな。どうせだし家具も買い直す?」
「…………しいて言えば」
「言えば?」
「畳があるならこたつが欲しいかな」
「寝るなよ?」
「………」
「寝たら撤去だぞ」
いや無理じゃん。
こたつとか実家いた頃何度寝たか。
リビングのこたつで寝て朝起きてきた母さんに邪魔やねんって怒られるのは冬によくあった。
ええーって思ったけど、ふと気づく。
「だいじょおぶ」
「ん?」
「こたつより、穂高さんとくっついて寝る方があったかいもんね」
こたつで1人で寝るなら、最初ひんやりしたとしても2人の体温であったかくなって、穂高さんにくっついて寝れるベッドの方が断然上。
そんな俺の答えに穂高さんは機嫌良さそうに笑った。
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