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2-25.
家に帰り、穂高さんが持っていたパンフレットよりよっぽど分厚いそれをワクワクと眺める。これは今日貰ってきたもので、オーダーできるすべてのものが載っている。
カタログ上のものだから、現実で見たら色のギャップはあるだろうけど家で見るならこれで十分楽しい。
そんな俺が座るソファの前に静かな音を立ててマグカップが2つ置かれて、ソファが少し沈んだ。
「ねえ穂高さん」
「俺、リビングがこんな壁紙だったら嬉しい」
「は?」
「ちょっとライン入っててなんか雰囲気可愛くなりそう」
「………俺はシンプルな方が好きだけど」
「なら寝室は?寝室の方がまだいる時間少ないし」
「それなら別にいいよ」
やったあ!と俺は喜ぶ。
まだ決めた訳でもないけど、こう言うのってオーダーできるならどこでも似たようなもんだと思うから楽しんでも損はない。
壁紙であんなにも雰囲気が変わるならこれはちょっと慎重に選びたい。
「全部読破する!」
「多くね?」
「いいとこ取り!」
そう言って笑う俺の頭を大きな手が撫でる。
その手の心地よさに目を閉じて思う。
穂高さんは、何か聞かれるかもって思ったんでしょ。
家に帰ったからって俺は聞かないよ。
ミホちゃんほどじゃないにしても、普段は優しい穂高さんがそのさでぃすてぃっくなところを持て余してたんだろうなってことくらいなんとなく分かるよ。
言いたくないなら言わなくていい。
「俺ね、これまでより今とこれからが大事だよ」
「だから、いーの」
目を開けて、穂高さんをちゃんと見て伝える。
言わなくていいの。
そう言ったら穂高さんは無言で俺を抱きしめる。
穂高さんもきっと、その性格と性癖に苦しんだことがある。それがどんなことなのか分からないし、俺と穂高さんの関係は恋人だからこそ言いたくないことかもしれない。
「俺と出会う前の穂高さんがいたから今の穂高さんがいる。俺は今俺といる穂高さんが好きだよ」
「………ほんと、お前には敵わない」
ぎゅうぎゅうと苦しいくらい抱きしめられるけど、嫌な気持ちにはならない。
そういうのは全部俺に向けて。
不器用でもなんでも、甘えていいんだよ。
俺はそんな穂高さんが、
「可愛いぃ」
可愛くって仕方がない。
ミホちゃんのこと言えないくらい不器用なんじゃない?
そんなところも可愛いと言う俺に可愛くねえよと全然可愛くない声が聞こえた。
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