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2-33.
翌日も休みだった俺は少しだけ朝寝坊をしてリビングに行く。すでに起きてる穂高さんが淹れたであろう香ばしいコーヒーの匂いがして、朝だなぁと思う。
「おはよぉ」
「おはよう」
「俺の朝ご飯、ある?」
「あるよ」
「やったぁ!」
「ちょっと待てるなら用意するけど?」
「大丈夫!」
穂高さんはゆっくりコーヒー飲んでて。
そして俺がご飯を食べてる間に俺のカフェオレ淹れて。多分同じコーヒーを使ったとしても俺が作ったらあんな風に美味しくならないもん。
やってみたけど、コーヒーが濃過ぎたり甘くし過ぎたりほぼ牛乳だったりで加減が全然分かんない。
「自分の好きなものくらい覚えろよ」
「いーの。穂高さんが俺に淹れてくれるから美味しいの。あ、愛情かな?」
「はいはい、そうだな」
きっとそうだ、愛情。
本人には適当に流されたけどあんまり気にしない。
今日はロールパンに具を挟んだサンドイッチみたいなのにスープかぁ。美味しそ、スープあっためよぉっと。
「あっためるなら気を付けろよ」
コンロに火を付けたところで穂高さんはそんなことを言う。何度も言うけど俺24歳!
「穂高さんっていつから料理してるの?」
「さあ、気づいた頃には母さんの手伝いしてた」
「うわ偉い」
「穂積もな。1番やんねえのは穂波」
ありゃま。
女の人が家事しなきゃいけないとは思ってないけど、まだまだ女の人がすることの方が多い家事。穂波ちゃんやっても損はないと思うよ。
「料理上手だよね、ほんと幸せ」
「誠はなんでも美味いって言うから作りがいあるよ」
「だって美味しいもん、この卵スープも大好き」
あっさり薄味、野菜も入ったふわふわ卵のスープ。
見た目通りの優しい味ですっごい好き。
「インスタントに戻れない」
「フリーズドライの?」
「そうそう!」
「へえ、1人暮らしの時はそんなの飲んでたんだ?」
「ううん、実家で」
「?」
「母さんが作ると卵がお鍋に焦げ付くし、お味噌汁は煮詰め過ぎて辛いし。汁系はインスタントに限るって言ってた」
俺的にそれで問題ないし、父さんや兄たち的にはこれの方が安心安全と母さんの手抜きを責める人は実家には誰もいない。今なんて父さんと母さんだけだし、作る手間考えたら全然それもありだと思う。
そう思う俺の目の前には2人分でも手作りしてくれる人がいるけど。そんな人が作ってくれたロールパンサンドとスープを机に運んで、俺は朝ご飯にありついた。
美味しい朝ご飯を食べ終わると、ちょうどいいタイミングでカフェオレが出てきた。
2人してまったりと寛ぎながら、俺たちの新居(予定)の話をする。と言ってもまだ何も決まってないんだけど。
契約をするならもう一度行かなきゃいけないし、契約をしたらその後も必要書類やらなんやらで数度は行かなきゃいけないらしい。
「お前留守番できる?」
「ふえ?」
「………ほんと、会わせたくない」
「俺、よその人に尻尾振ったりしないよ?」
「そういうことじゃねえんだよ」
「???」
なんでそんなに困ったというか、嫌そうというか、辛そうというか、そんな感じなんだろ。
「お留守番でもいいけど、俺におやつ買ってきてくれる?」
「いいのか?」
「うん。ちょっとモヤモヤするけど、穂高さんの嫌なことしたいわけじゃないし、いい子でいる」
嘘、本当はすごくモヤモヤする。
「いい子で留守番してるから」
「うん」
「だから、あんまし辛そうな顔して帰って来ないでね。俺が行かなくて穂高さんが少しでも楽なら、それでいいよ」
嘘、本当はそばに居たいよ。一緒に住む家だもん、一緒に考えたいよ。
けど、けどそんなわがままより。
穂高さん、今自分がどんな顔してるか知ってる?
俺はそんな困った顔、させたくないんだよ。
もっと意地悪く、楽しそうに笑ってよ。
もっと優しくて、甘ったるい笑顔を見せてよ。
「穂高さん、周辺の甘いもの売ってるお店も調べてきてね」
「はいはい」
それでも俺を撫でる手の優しさはいつも通りで、俺が大好きな手だった。
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