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2-53.
俺の様子に少し安心した感じがする穂高さん。
俺はそんな穂高さんを小さな声で呼ぶ。
「どうした?」
「ごめんなさい」
「なにが?」
「俺と前田さん、会わせたくなかったんでしょ」
「会いに行ったわけじゃねえんだろ?」
「うん」
「なら仕方ねえよ」
ほんとに?
ちょっと嫌だなぁとは思うけど俺は全然平気だから、穂高さんが辛くならないでほしい。穂高さんが言いたくないことを、俺はわざわざ他の人に、前田さんに聞いたりしない。もしもどうしても聞かなきゃいけない事情ができたとしたら、その時は穂高さんから聞きたい。
「穂高さん、もぉ前田さんに会わない?」
「そうだな。家関係の用って内装の決定と引き渡しくらいだからな」
「良かった」
「?」
「前田さんって性格悪そぉ」
「………」
「本人には俺が性格悪って言われたけど」
「こんなに素直なのに?」
「ねー?おかしいよっ」
ふんふんと怒ってみせるけどそんなに腹は立ってない。
たとえ性格が悪いと知っていても、好きで好きで堪らなくて、この人がいなきゃ嫌だって思うことがあるって、俺は知ってる。
少し愚痴をこぼした俺に怒ることもなく、穂高さんは予定通り出来ていたらしいバーチャルモデルルームを見せてくれた。画面の中で360°見渡せるけど、本物のモデルルームの方がなんとなく良かった。見るだけじゃなくて体感って感じ。
こういうのは想像よりも実感に限るらしい。
「あ、寝室のクロスこれにしてくれたの?」
「誠がそれがいいっていってただろ」
「うんっ」
リビングはシンプルな白っぽい壁紙だったけど、寝室は下の方にラインが入ったもの。いつだったから俺が可愛いと言ったやつ。ただ、ラインは上の方じゃなくて下の方に入っていてそんなに目立たないとは思う。
「下にも出来るって言われたから下にした」
「穂高さんってこぉいうのセンスいいね」
「そうか?」
「俺は住めたら何でもいいし、買い足すときも統一感とか考えないもん」
穂高さんの家は俺が転がり込んだ時からそんなに大きく変わっていない。俺が生活するために増えた物(主にカバンやコントローラーを直すカゴたち)もあるけど、部屋の統一感は失われていない。白と木目を基本にした明るくさっぱりした室内。
家具も落ち着いた色合いを選んでいて、白黒で目がチカチカする!なんてこともない。穂高さんに任せておけば住みやすい家になることは十分に学んでいるのだ。
そうして一通りバーチャルモデルルームを楽しんだ。
俺が知らない間に付け足されたオプションがいくつかあった。普段から家事をする穂高さんならではのもので、俺はほほぉと眺めるだけできっと使うことはないだろう。
「もしかして穂高さんってしばらく家賃にローンどっちも払ったりする?」
「そうだけど?」
「やっぱり俺どっちか出すよ」
「別にいいって。払える」
「穂高さん、もう少し俺を頼らない?」
「困ってねえのになに頼ればいいんだよ」
「………」
「払ったところで生活水準も下がらねえから安心しろ」
ああ、ダメだぁ。
この人どんだけ稼いでるの?
普通の30歳って家賃にローンが乗っかってきたらひーひーふーふーするものじゃないの?
どうやって生活しよう!?とかならないの?
その上扶養でもなんでもない人を1人養ってて、いやいやいや。俺30になってそんな生活できるかな?
野田さんや内村さんの奥さんは2人とも専業主婦だけど、きっとローン×2とかになったら2人とも青い顔しそう。
知らない方が幸せなこともある
そう結論づけている俺は考えないことにして、困ったときは言ってねとだけ付け足した。
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