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大学にデータを取りに行ってから、俺の仕事はようやく落ち着いた。今は俺より偉い人たちがひーひー言ってるらしい。たまに分からないデータに関して聞かれることはあったけど、あれ出せこれ出せと俺に降ってくるような仕事はぐっと減った。
そうしていつもより社畜に戻ったわけだけど、それがこんなに幸せだったのかと思い知る。
「あとは体重が戻れば超ハッピー」
体重計に乗ったままそう呟いた俺に穂高さんは舌打ちする。これがミホちゃんなら蹴りのひとつでも飛んできそうだけど穂高さんは俺にそんなことはしない。舌打ちして睨んでくるくらいはされるけど気にしない。
「お前ちゃんと食ってんのか」
「食べてるよおっ!」
「なんで戻らねえんだよ、今週は10時過ぎには帰って来てただろ」
「知らないよおっ!俺の方が困るんだから!エッチしたぁい!」
体重計から降りて抗議をするけど、穂高さんは舌打ちしかしない。3月に入ってからずっと、俺と穂高さんはエッチをしていない。俺は抜いてもらってるけど、おちんちんしか触ってくれなくてお尻が、体の奥がうずうずして仕方ないけど、触られたとしても指なんかじゃ満足できないってことも分かってる。
穂高さんだって、俺のお手伝いをしてくれるけどその時はもちろん勃ってるからそのあとどうしてるのかは知らない。俺はなんのサービスかいかされすぎてくたくただから何かしろと言われてもまともな愛撫が出来る自信はない。
そんな会話をした3月も今日で終わる。
俺もようやく通常の業務が出来るようになった。むしろ試作のほとんどが上の人に渡って行ったことによって通常の検査しかない分俺は早く帰れるようになった。
「伊藤くん」
「はい」
「ようやく落ち着いたところ悪いんだけど」
「………」
「次にどんな研究をしたいとかある?もちろん製品に関することになるんだけど」
あ、なんだそんなこと。
「ありますよ。試作の持ち運びを検討したいのと、変色しない組み合わせがないかなと思います」
「そのあたりちょっとレポートにまとめてもらっても良い?急がなくてもいいんだけど、伊藤くんの次の研究候補ってことで」
「分かりました。提案ってことなんで結果までは書かなくて良いですか?」
「うん。目的とやり方、それと伊藤くん自身の予想。あとは予算かな」
そうだよね、俺って研究職だもん。
ひとつ終わって終わりな訳なくて、ひとつ終わると次が来る。それは成功するのか成功しないのかやってみないと分からないけど、終わりじゃないのか。
「なんか、安心しました」
「何かあった?」
「なんとなく、よくやく終わったって思ってたはずなのになんとも言えない寂しさみたいなのがあったんです。次の研究があるだって思うと、ほっとします」
「残業はほどほどにね」
「野田さんもです」
俺がそう返すと2人して苦笑いを浮かべる。
いつになれば俺たちは残業(サービス)をしなくて済むんだろう。俺も今は落ち着いてるけど、今後どうなるやら。
だけど良かった。
まだまだやりたいことは沢山ある。
あれもいいな、これもいいななんて考えながらルンルン気分で家に帰る。
会社で考えてもいいけど、検査として俺がやることはもうなかったから家に帰ろうと7時過ぎに会社を出て原付に跨った。
そうして家に着くと、少し前に見たのと同じ光景だった。
俺のこと、待ち伏せて楽しいのかなあ。
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