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2-69.

ようやく全部埋まって、ゆっくり空気を吸い込もうとしたのに、俺の口の中には空気じゃなくてあつい舌が入ってくる。ゆっくりと舌を絡めるそのキスは、深いけど激しさはなくて、その心地よさに少し力が抜けた気がした。 「悪い、ほんと余裕ねえ」 「へ?」 え?と見上げた時にはさっき奥まで入ったばかりのものがずるずる抜けて、俺の中を擦る。全部出ていきそうになると当然また入ってきて、ごりごり前立腺を抉りながら奥を突かれて体を反らせて快感を逃がそうとしてみると、逆に腕をベッドに縫い止められて動けなくなった。 「ひぃあッ、まっ、あンッ、はあっ」 余裕がないという言葉通り、完全に穂高さんが好きな動き方。俺の中で自分のもの擦って、奥まで埋める。 俺はお尻の経験って穂高さんとしかなくて、この人を甘く堕とすのが上手い人しか知らない俺は穂高さんの好きなように動かれても気持ちいい。 「ぁ、気持ち、、そんな、されたらアッ!出ちゃ、出ちゃうぅっ」 「っ、もうちょっとッ」 少し詰まった、穂高さんの色っぽい声。 それに重なるのは俺のお尻から響く、ぐちゃぐちゃとも、ずぽずぽとも言い難いやらしい音と、俺の甘ったるい声。 気持ちいぃと何度もこぼせば、穂高さんは俺の口を塞いで口の中も気持ちよくしてくれる。 全部全部、穂高さんに溺れていくみたいで気持ちいい。 俺は穂高さんのこと……… 「誠」 「ふっ、あ、な、ぁに、ンッ」 もういきそうってところで、この場に似つかわしくない甘く優しい声で名前を呼ばれて、穂高さんを見る。あまりに近い距離にうまく合わないピントの中見る穂高さんはきっと甘い顔をしている。 そのまま見上げているとさらに近づいた距離に目を閉じようとして、聞こえた声。こんなに近いところにいて、聞こうとしてなきゃ聞き逃しそうな小さな声。 愛してる そう聞こえて、驚いて目を見開いた時には重なっていた唇。近すぎて穂高さんの顔は全然見えないし、嬉しすぎて出てきた涙で視界は更にぼやけた。 返事は聞かないつもりなのか、それとも何も言わせたくないのか、ぐんっと奥を突かれて俺はいった。 穂高さんはもう少しみたいで、射精直後にもかかわらず遠慮なく動かれた。精液がとろとろ溢れて、気持ち良くってたまんない。 穂高さんはいつも大事にしてくれるけど、言葉の力ってすごい。 体はもちろん、心まで溢れるくらい満たされた俺はベッドに寝転がったまま穂高さんを見る。当の穂高さんは俺の中から自分の性器を抜いて、ゴムをポイって放り投げてた。 「………」 「ねえ穂高さん」 「ほら、寝るぞ」 「ちょ、え、待って!」 「待たない、寝る」 視線が絡んで、俺の顔はきっと緩みまくってる。 嬉しくて嬉しくて、もう見るも無残なくらい緩んでいるだろうけど穂高さんはすぐに目を逸らして寝るなんて言う。 穂高さん的に恥ずかしくて、不器用な照れ隠しなのもバレバレだから俺はもうきゅんきゅんを超えてずきゅんずきゅんと心臓が痛い。 「穂高さんが可愛くて死にそぉお」 ベッドの上でジタバタもがけば邪魔と少し押されて穂高さんも横になる。当たり前のように俺を抱き寄せてくれた穂高さんの胸元に顔を寄せて、大好きとおやすみを伝えて目を閉じた。 俺の意識が夢の世界に行く寸前に、愛おしい言葉が聞こえて気がしたけど、夢なのか現実かの区別はつかないままぐっすりと眠った。

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