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「まこちゃんって意外と大人だな」 「それだけ失敗だらけの人生ってことです」 失敗したら、やり直せばいい。 俺には、自分の涙を呑んででもその場所を残してくれている人が居る。そして、そこまで帰らなくても俺がもう嫌だと泣きついたら、やめろとも頑張れとも言わずに泣かせてくれる人も居る。 「俺は人に恵まれてきた自覚があります。傷つけたこともあるけど、それを含めて俺ですから」 「まこちゃんが女の子だったら惚れそう」 「残念ながら俺、女の子だったらこの人に惚れたいって思う人が居るんでお断りです」 俺が女の子だったとしても、穂高さんがいい。 幸いにも(?)、穂高さんは男女どっちもいける人だし。 あ、でも女の子だったらあの時飼ってもらえなかったかな? 「まこちゃんの後悔ってなに?」 「ぐいぐい来ますね」 「ズバズバ言うまこちゃんだから良いかなって」 「俺、秘密主義なんです」 「絶対嘘だろ」 嘘とも嘘じゃないとも言えない。 誠の後悔ってなに?と穂高さんが聞いたなら、素直に話す。ちょっと機嫌を損ねそうだけど、それは過去だと割り切ってもらう方向で。 でも今日会った山口さんに話す意味は特にない。 「ほんと、羨ましかったんだよなぁ」 「俺、いじめも喧嘩も何にも言いませんよ」 「俺が悪いとも言わない?」 「一対一なら言いません」 「あー、つまり多勢に無勢した俺は悪いわけだ」 「そういうわけです」 一対一なら好きにしたらいい。俺個人としてはお互いが納得した上での殴り合いも男同士の若い時ならまあ、したらいいと思ってる。 心理戦でもなんでも、好きなだけやりあって、仲直りしてもいいし仲違いしたままでもいい。 「まさかこんなところであゆちゃんに会うなんてなぁ」 「ところでなんでその呼び方なんですか」 「なんでだったかな?」 俺の質問に少し考え込んでから、ああそうだ!と思い出したように話してくれる。 「なよなよしてて女みたいだからって呼び始めたんだよ」 「………後悔してるなら、もういい加減田中くんとか田中って呼んであげたらどうですか」 「まこちゃんはいいの?」 「俺は別に。嫌だけど、山口さんって言っても無駄そうです」 「ほんとズバズバ言うな」 ズバズバ言ってる自覚はあるけど、それはそれを許しそうな山口さんの雰囲気があってこそだ。 仮に田中さんに会わなくて、山口さん自身が言わなければこの人が過去に人をいじめたことがあるとは俺はきっと思わない。 明るくて朗らかで、気さくに話せる雰囲気が強く出てる山口さんは俺的には話しやすくて嫌いじゃない。 「それもそうか。今更田中くん?田中?どっちがいいんだろ」 「あゆちゃんじゃないならどっちでもいいと思います」 「まこちゃんみたいなタイプ、俺好きだなあ」 「そういうのは女の子に言ってあげてください。俺も言われるなら女の子がいいです」 「違いない」 いやぁな顔して答えた俺に怒るわけでもなく、けらけらと楽しそうに笑ってる山口さん。 こんなにも気軽に話せるのはやっぱり山口さんの持つ雰囲気によるものが大きい。今日会ったばかりの、年下の後輩からちょっと生意気聞かれても、ただ楽しそうに話して笑っている姿からは、いじめっ子の山口さんは想像できなかった。

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