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「なあ」 「はい?どうかしました?」 「あんた、ちゃんとしてなきゃ奪うからな」 「へ?」 「探したって居ないじゃん、セックスの相性が良いのに性格まともな人」 「えっ、穂高さんの性格まともだって思ってるならやめた方がいいよ?」 「?」 「こんな性格悪……じゃなかった、歪んだ人そう居ないよ、ね?穂高さん」 「俺に同意を求めんな」 そう言って同意を求めた俺の頭をくしゃっと撫でて誤魔化す穂高さん。俺はこんなじゃ誤魔化されないぞ。 前田さんは穂高さんのこと性格いいって思ってるみたいだけど、違う違う。性格はよくない。優しいし甘ったるいけど、それは完全に罠だ。罠を張ってる時点でそれのどこが性格いいんだろ。 「ほんと、あんた変わってんな」 「そうですか?」 「連絡先聞いていい?」 「やだ!もおこれ以上面倒なこと持ち込む人やだ!無理!やだ!」 「さっさとスマホ出せよ」 「やだぁぁぁあ!」 俺の絶叫が店内に響き渡り、穂高さんにうるさいと叱られ、前田さんの連絡先が増えた。 俺にとっては踏んだり蹴ったりだ。 最後はまた連絡するなと言って消えていった前田さんを見送って、俺にはどっしりと疲れがのし掛かる。穂高さんからはお前また面倒なのに懐かれやがってと言われるし、やっぱり踏んだり蹴ったりだ。 「………これを機にスマホ買い換えようかな」 「俺と合わすか?」 「………それはやめとく。俺が払ってる数少ない支払いが取られそう」 「甘えりゃ良いのに」 ほら、やっぱり。 スマホ代まで穂高さんが払い始めたらいよいよ俺の働く意味がなくなる。 「実は最近、自分に保険をかけようか悩んでる」 「は?」 「お金の使い道がないし、どっちにしても貯金してるから養老年金とか?あと、生命保険なら受取人を穂高さんに出来るし」 「お前詳しいな」 「にいちゃんの1人が保険会社に勤めてて、にいちゃん達が結婚して保険入るとかなったら家で話してたから」 「なるほどな」 にいちゃんたちは家族を作っていくわけだし、その辺すごい真剣に離してたからその場に居ただけの俺もなんか覚えちゃったんだよね。 最近の貯金ぶりから、俺はそういう保険に向いてるんじゃ?と思ったこともあって少し調べたこともある。本気でやろうと思った時はにいちゃんを呼び出して相談しようと思っている。 そんな感じに俺のお金の使い道を少し話してから、ようやく本題のカーテンを見る。 なんだかだいぶ気が逸れたけど、これが今日の1番の目的だ。 「カーテンってこんないろいろあるの?」 「そう。どれが好き?色もん以外な」 「えっ!色付きだめ!?」 「白か、せめてクリーム色とかにしろ。ピンクとか無理」 「こんなに可愛いのに!?」 「部屋に可愛さ求めんなよ。女子の部屋じゃねえんだし」 性別は関係ないよ。好きな色の話だもん。 くすみがかった、いわゆるダスティピンクとかグレイッシュピンクと言われる色が1番好きだけど、パステルカラーの綺麗なピンクも好き。水色よりピンク。それは昔から変わらない。 「うーん、ならこれ」 「………また柄物か」 「ピンクじゃないよ?」 白地に花柄があしらわれた綺麗なカーテン。 こういうの、やっぱ華があると思うんだよ。 「………ならこっちは?」 「ちょっとおとなしくなった」 「俺も住むんだよ」 「なんなら穂高さんの家だよ」 そう。俺の意見をよく聞いてくれるけど、間違いなく穂高さんの家だ。名義もそうだし、なんとローンすら俺に払わせてくれないなら間違いなく穂高さんの家だ。 そう思って当たりを見回す。こんなにもカーテンが並んでると多すぎて悩む。それこそ色や柄物が目立つからそっちばっか見ちゃうほどには。 「あ、これは?」 「お前にしてはだいぶ大人しいな」 俺にしてはだいぶ大人しめ。 白地に下の方から蔦が伸びるような柄がいってるけど、それはカーテンの半分にも行かないところで自然となくなっている。柄自体もそんなに多くなく、主張し過ぎではないと思う。 「っていうか俺に選ばせたらえらいことになることくらい分かってるよね?」 「ああ。けどお前も住むんだし、今の家みたいに俺が全部やったら柄なんてないぞ」 「住めば都!」 「たくましいもんな」 これたくましいってことなの? そう首を傾げる俺を置いて、結局は穂高さんが真剣にカーテンと睨めっこしてた。 ただ、その目線は無地のレースカーテンじゃなくて少し柄の入ったものを真剣に見ていたから、穂高さんの中で部屋に合いそうなものをイメージしてるんだろうなぁと俺は出来るだけ静かに見守った。

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