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「え、あの、ちょっと確認いいですか?」
「うん?」
「同意の上、で???」
「ああ、それは同意っちゃ同意」
「………」
「あゆちゃ……田中くんが俺に何したって、俺は責める気ないからさ」
「………」
「それですっきりするなら俺は別にいいし」
いや、どう見てもすっきりしてないと思いますよ。
なるほどそれでか。
「野田さんに田中くんって呼ばれて壁に謝るほどにはトラウマになってますよ」
「まじで?俺居なくても?」
「はい」
「だめじゃん」
「はい、だめです」
そして俺に話すのもなーと思う。
そりゃわざわざ喋るタイプじゃないけど、聞きたいタイプではない。もう面倒を持ってくる人と関わりたくないのにどうして関わらなきゃいけないんだ!と心の中で憤慨する。
「ところでなんかいい薬とか病院知らない?」
「なんで俺に聞くんですか、知りませんよ」
残念ながら俺はお世話になったことがない。
穂高さんはむちゃくちゃしないどころかエッチが上手だもん。痛い思いをさせようとしない限りは俺が痛みを感じることはないだろう。穂高さんのがおっきすぎるから苦しさはあるけど、痛みを感じたことはない。
「まこちゃん、男の人と付き合ってたりしない?」
「はい?」
「守られてるっていうか、愛されてるっていうかそんな雰囲気ある。すっごい彼氏に大事にされてる女の子みたいな感じだもん」
「………」
「気のせい?」
「………はあ。気のせいじゃないです」
「やっぱり!切れたことくらいある?どうしたらいい?」
縋るような目で見られたけど、俺はないですとバッサリ切り捨てる。
俺はお尻、切れたことなんてないもん。
って言うかこの2人も何がどうしてそうなったんだよ。
「ええ、切れるもんじゃないの!?」
「さあ。下手くそだったんじゃないですか」
「ぶっは」
俺が適当にそういうとゲラゲラ笑って腹痛えっとお腹を抱える。
と言うか田中さん、思い切ったことやるなあ。なんか振り切っちゃったのかな。
間違っても女の子相手にそんなこと……ってあの人原田さんも拗らせたまんまじゃなかった?大丈夫か?そんなに要領良くないしキャパシティは狭そうなのに。
「仲直りえっちするにはハードル高すぎません?」
「実際女の子って仲直りしてすぐセックスしようとしたらブチ切れじゃない?」
山口さんのその言葉に俺は大いに頷く。
少なくても俺の彼女は仲直りしてすぐエッチとかふざけるなってタイプだった。彩綾に至っては、最初に喧嘩して仲直りしたときに今エッチするとか言ったら別れるから!と宣言してきたほどには嫌なことらしい。
「とりあえず、円座でもプレゼントしましょうか?」
「痔って思われるからやめて!」
「ちょっと待ってくださいね。聞いてみます」
お尻が切れたなんて、そりゃ大変だろう。
きっと座るのだって痛いだろう。だから今日は覇気がないのかな。
そんなことを思いながら俺は穂高さんにメッセージを送る。
『お尻切れた時ってどうしたらいいの?』
と用件だけを送ったのが間違いだったと気づくのにそう時間はかからなかった。
穂高さんにメッセージを送ったはずなのに、すぐに電話がかかってきて俺はのんびりと電話に出る。
「もし『切れたっていつ?なんでさっさと言わねえんだよ』
「へ?」
『会社の近く薬局とかドラッグストアあるか?』
「あの……」
『つべこべ言わずさっさと行け。あと今日は早く帰ってこい』
「待って!俺じゃないから!俺分かんないから聞いてるだけだから!」
『は?』
「俺じゃないから!えーと、詳しくは家帰ったら!とりあえずドラッグストアはあるよ」
俺のお尻の心配をしてくれた穂高さんを宥めて、紛らわしいんだよと舌打ちされたけどドラッグストアで手軽に買えるけど使えるものをちゃんと教えてくれた。
ついでのお節介に、んなヘタクソとやんなって言っとけと言うあたりひどい人だ。みんな穂高さんみたいに上手じゃないよ。そもそも穂高さんと田中さんじゃ経験値が……なんて思ってる俺に笑い声が聞こえてくる。
「ぶっ、くくっ、くっ」
「ちょっと!何笑ってるんですか!」
「まこちゃんめっちゃ大事にされてんじゃん」
「………」
揶揄うようにそう言われると恥ずかしくてぶすっと山口さんを睨み付ける。
「もぉ教えてあげません」
「ああ、ごめんごめん。まこちゃんいい人と一緒にいるんだな」
「偏見とか無いんですか」
「特には。まあ自分が突っ込まれることは想像してなかったけど」
「………ドラッグストアでオブラートも買ってきたらどうですか?」
俺はそう言って、冷ややかな目で山口さんを見送った。
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