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2-104.
おにーさんに連れられてやってきたのはデパートだった。
その辺のショッピングモールよりも敷居の高いそこ。
「………デパートで買うの?」
「俺はここで買うな」
「何買ったの?」
「今年は財布。ファスナーの調子が悪いって言ってたから買うなって言っておいた」
「何あげるかバレてるじゃん」
「お前のお母さんと同じだよ」
「うん?」
「貰ったら使ってくれるけど、財布なんて2つも使わないだろ」
あ、そっか。
プレゼントはバレちゃうけど、お母様が穂高さんに貰ったものを使いたい気持ちと、だけど最近買ったのに…という気持ちの葛藤を生ませないための言葉なのか。
「穂高さんはそういうの、思いやるの上手だね」
俺にはなかなか出来そうにない。
相手が喜ぶかは考えて見るけど、考えた結果分かんなくなって店員さんのおすすめになりかねない。
「候補は?」
「うーん、今ならエコバッグかな」
「?」
「俺と似たタイプだから、両手で抱えようとする」
「無理だろ」
「だから段ボールのゴミが増えたって言ってた」
「………」
「俺と同じで適当でいいから、畳みやすさ重視!」
母さんも肉が寄るなんて気にしない。お刺身のパックでさえひっくり返して持って帰ってきても気にしない人だ。中身はおんなじやろと言って終わっていた覚えがある。それを残念そうにしていたのは父さんと兄たちで、俺はそうだよねと頷いていて兄ちゃんにしっかりしろ!と揺すぶられた気がする。
「お母さんにだと柄が入ったのあるといいな」
「そうだね、やっぱり可愛いのがいい」
そうしてエコバッグを目指していたはずなのに、気づけば俺は寄り道だらけだ。
母の日コーナーは綺麗で可愛いものが多くて、あれもいいなこれもいいなと定まらない。さすが母の日向け、どれを贈っても母さんは綺麗やん!と喜んでくれそうなものばかりが並んでいた。
「エコバッグと何かにしようかなあ」
「買い物でまとめるなら小さめのポシェットとか?」
「母さんはいつも財布だけ持って買い物に行くよ」
「………」
穂高さんは信じらんねえと言いたげな目で俺を見るけど、うちの母さんはそうだ。近いし財布だけ持ってたらなんとかなると、日々の買い物はそんな感じ。帰りは買ったものが詰まった段ボールに財布も入れて、抱えて帰ってきているに違いない。わかる、だって俺、母さんの息子だから。
「お財布ポシェットとかは?」
「母さん移し替えとかしないよ」
「………」
「俺の上位互換だから」
「………」
俺のズボラさは母さん譲り。
ただ、俺は兄と父の影響で母さんより少しはマシだというのが俺の自己評価。
「でも、ポシェットとかは便利そう。母さんって大は小を兼ねる!とか言っておっきい鞄ばっかり持ってるんだけど、タオルとか5枚くらい出てくるよ」
「………せいぜい2枚ありゃ足りるだろ」
「カビが生えたおにぎり出てきたこともある」
「………」
流石に俺はそんなことしたことがない。せいぜい貰った飴の存在を忘れていて、鞄の中で温められて袋から取り出せなくなったことがあるくらいだ。
「いつも重い重いって言って鞄持ってた」
「整理しろよって思うけど、誠もほっといたら給料明細も鞄に突っ込んだままだもんな」
「うん」
穂高さんに言われてから取り出して、穂高さんが保管してくれている。源泉徴収票やら年金やら、俺がよく分からないことをきちんと確認してから捨てられていってるからすごく安心。
そうして色々な話をしながら、母の日のプレゼントを選んだ。
穂高さんは俺から聞く母さんのズボラさにちょっと引いていたように思うけど、そのくらい適当でもちゃんと立派な母親はしていたから大丈夫だ。
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